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15 epilogue
私とユキは、付き合うといっても、兄弟みたいに過ごしてた。死が忍びよる気配に打ちひしがれていたのに、ある時、ユキが変なことを言い出した。
「僕が生まれ代わるなら、
加奈の子どもになりたいな。
加奈の子どもに生まれ代われるなら、死ぬのも悪くないと思って」
その日から、私たちは、今のユキの未来じゃなく、私の子どものユキの未来の話をして、楽しんでた。1歳は、動物園行きたいなーとか。サッカー部に入ろうとかなーとか。
今のユキは、できないことが多すぎて、何も実現できないけど、未来のユキは、健康で夢がいっぱいあった。旅行に行く計画を立てたり、遊びの計画をたくさん立てた。この妄想遊びは、私たちのお気に入りだった。たまに、おばさんも一緒になって、参加した。
「加奈ちゃんの子どもなら、私には孫みたいなもんよね。孫とは、富士山登ってみたいな」
「えー、キツイよ」
「おばさん、ユキの男の子バージョンと女の子バージョン考えないとダメなんだよ。」
「そうなの?女の子なら、お雛様買ったげる」
「夢ないなー。ディズニーとか、ハウステンボスとか連れてってよ」
「私、海外旅行行きたい」
「北海道か沖縄なら、皆で旅行するのいいわね」
「スポンサーゲットした」
現実逃避かもしれないけど、毎日、未来のユキの話をして、笑ってた。でも、陸兄が参加することはなくて、ユキが避けてたんだと思う。たぶん、私の子どもになる話は、恥ずかしかったんだろうな。
「結婚相手は、絶対、イケメンにして。
イケメン。
でも、陸兄の子なら、僕にも似てるかも。母さんも、本当の孫と沖縄旅行できるよ」
ユキは、時々、そうやって私をからかってた。ユキを忘れないよ。大丈夫。
ユキ、未来のユキに早く会いたいよ。
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