17 番外編(side②)

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17 番外編(side②)

 カフェで、旅行サイト見ながら、良さそうなのをピックしてたら、お袋から、メールがきた。写真が添付されてて、20代の男性3人と、40代ぐらいの男性1人、お袋と加奈子の6人グループが、ユニフォーム着て映ってた。お袋も加奈子も楽しそうだ。現地集合なのか、皆で行き帰りも一緒なのか、お袋に聞くの忘れた。  加奈子が、1人暮らし始めた理由は、これもあるかもな、と思った。このユニフォームを、伊藤家で洗濯して干すのは難しい気がする。例え、年1でも、引っ越しを考えるかも。  おじさんも熱狂的なサポーターだもんな。  定時で終わったみたいで、予想した時間通りに加奈子がやって来た。 「もう、帰ろう。うちに来る?昨日、チキンカツ多めに揚げたから、今日はチキンカツ丼にしようと思って。サラダの野菜だけ、買いたいからスーパーに寄りたい」  そのままカフェを出て、駅に向かう。ふふふと、笑いながら、俺の顔を下から覗き込んできた。 「高橋くんに会ったんだってね。 高橋くんが、ユキのお兄さんに会ったって、言ってた。陸兄が、かなり驚いてたって。  わかる。私も入社式で驚いたもん。  高橋くん、ユキをイケメンにした感じだよね。ふふ、おばさんは、陸兄より、おじさんの若い時に似てるって」 「さっき、母さんに電話した。サッカーの話して、誤魔化された気がするけど。  母さんは、サッカーじゃなく、高橋さんのファンなんだ」 「ふふふ、当たり。私も楽しいから、便乗してる。大野選手のファンになったの。大野選手の前を向いて、後を見ないプレースタイルが好きなの。テクニックもあるし、ゴールに貪欲なところがいいの」  グループとはいえ、男性と旅行なんて、お袋が俺に言わない訳だ。 「母さん、加奈子を独り占めするなってさ。高橋さんに会えなくなると、困るからか。何か、騙された気がする。  その流れで、さらっと、加奈子と一緒に住んだらって」  目を見開いて、嬉しそうな顔をしたから、ほっとする。さらっと、話を振ったけど、嫌がられたら、凹む。 「陸兄と一緒に住むの、楽しそう。 ・・・でも、パパとママがなんて言うかな。ふふ、ママに彼氏ができたって、話したんだ。そしたら、ママがパパに直ぐ言っちゃって。  パパは、陸兄と付き合ってるなら、実家の方が楽じゃないか、って。戻って来て欲しそうなの。陸兄のこと気に入ってるし、パパもママも喜んでいるよ。  あったかくなったし、陸兄とバーベキューしたいって」   「おじさんには、大事な一人娘だもんな」  ああ、早く一緒に住みたい。結婚を前提としてお付き合いをしてますって、挨拶に行った方が良さそうだな。 「パパが、再来週、陸兄と私に一緒にアウェイで清水行かないか?って。本当は、パパとママで行く予定だったけど、陸兄と私も一緒行くなら、桜エビのかき揚げとシラス丼を奢ってくれるって。    私ね、桜エビのかき揚げとシラス丼好きなんだよね。ママが運転するから、私達はビール飲んでいいって」 「いいね、行こう」  おじさんがビール飲んだ後なら、同棲のことを相談しやすい気がしてきた。 「その時、一緒に住みたいって、話そうか」 「うん、私もお願いする。 早く一緒に住めるようになったらいいね」  カフェで1人の時は、高橋さんや旅行グループのメンバーが気になって仕方なかったけど、加奈子が側にいると、やっぱり、オキシトシンがたくさんでてる気がする。  押し寄せてた不安がなくなって、溢れる多幸感に、加奈子とずっと一緒いたいと、改めて決意する。
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