2 side加奈子①

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2 side加奈子①

 朝からラジオでは、桜ソング祭り。  母は、朝にテレビをつけたがらない。父と私は朝が苦手で、すぐテレビに観入って活動停止になってしまうから。     1人暮らしを始めてからも、そのままの習慣でラジオを聴きながら、トーストをコーヒーで流し込む。ちょっと前までは、受験応援ソング特集だっのに、季節の移り変わりを、歌で感じた。桜ソングに聴き入ってたら、遅れそうになり慌てて自宅をでる。  電車は滑り込みセーフで乗れた。1人分の席が空いてたけど、立ったままボーとする。いつもは座れたら、読書するんだけど、そんな気分じゃなくて、時々、車窓から見える桜を目で追ってしまう。目から入る桜色に思考が過去にトリップしそうになる。  ああ、駄目ダメ、トリップしてられない。今日は、来月からの新規プロジェクトの顔合わせがあるから、午後14時までに仕事を終わらせないといけない。仕事が立て込んでるから、そのためにいつもより早めに出社したのにトリップしてられないわ。  新規プロジェクトは、いろいろ業種をコラボさせてる企画で、音楽とスポーツとか、車とファッションとか、食と本とか、その流れで、今回は、建物と健康。私の会社は健康グッズを扱う会社なので、不動産会社とのコラボ。家か、マンションか、健康に住むをコンセプトにするのかな。コンサル会社が主導なのかと思ってたら、2社が企画を考えて、すり合わせするらしい。その組み合わせでケミストリーを狙います的なものらしいけど、異業種すぎてコミュニケーションとれるか心配。私は、スケジュール調整がメインだから、相手の会社の担当の人が女性だったらいいなと思う。人見知りではないけど、知らない人と仕事をするのは、気が重い。きっと慣れた頃に終わるんだろうな、と思う。  今日は顔合わせして、軽い打ち合わせをしたら、懇親会をすることになってる。制服があるから、出勤服にはあまりこだわってないけど、    今日は綺麗めの格好で出社した。誕生日だし、気分をあげるためにお気に入りのワンピースを着てきた。  ロッカーは、いつもの時間より早いせいか、誰にも会わなかった。普段は制服に着替えたら、仕事モードになるけど、今日は1日が長いなと、ため息がでた。でも、金曜日だから明日はお休みだし、と、気分を変えてデスクに座って仕事を始めた。    そろそろ時間になるから、会議室へ行かないと。後輩の岬ちゃんに担当会社の人が来たら、お茶出しを依頼した。他の準備は出来てる。  一緒のチームの武田くんに声かけようと思ってたら、デスクに居なかった。  会議室に行ったら、石川課長と林さんがいた。課長に武田くんがどこに居るのか聞いたら、武田くんと小川さんは、会議室に案内するために、1階にお迎えに行ったらしい。  予定時間の5分前に会議室のドアが開いて、武田くんが入ってきた。その背後から、顔を出した人を見て心臓が止まりそうになった。 陸兄、だ。  鋭い眼光で睨む陸兄と一瞬、目が合って、びっくりして下を向く。  何で?何でいるの?陸兄の会社とのプロジェクトだと思わなかった。そっと、陸兄を見たら、ニヤリと笑ってた。もしかしたら、陸兄は、私がいるのを知ってたのかも知れない、と、ふと思った。  皆が席について、お互いの自己紹介が始まる。陸兄は、不動産会社側のチームのリーダーとして、自己紹介してる。  私は、その姿を魅入るように見つめてしまう。きちんと、見るのは久しぶりだ。4年ぐらい前の七回忌が、同じ空間にいた最後かも。その時も、正面にいた訳ではないから、こんなにじっくり見ることは、なかったな。  中・高生ぐらいの時の陸兄を思い出し、今と違うなぁと、考えていた。  その後は、どうやって自分が自己紹介したのか、あんまり覚えていなかった。ずっと、会ってなかったのに何で今日なんだろう。ああ、長い3か月になりそうだな。  陸兄は、私の幼馴染みだった。私の家の隣には、陸斗と雪斗の兄弟が住んでいて、一人っ子の私は、いつも一緒に遊んでた。3つ上の笹木陸斗と同い年の笹木雪斗。私は、幼稚園のころには、もう、陸兄が好きになってだと思う。
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