3 side加奈子②

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3 side加奈子②

 会議室では、顔合わせがメインで、今日は細かい打ち合わせはない予定。せっかくの挨拶なのに顔と名前が、全然、頭に入らない。どうしよう。陸兄を意識しすぎて、全然集中できない。かろうじて、1人は覚えることができた。綾吉優子さん。綾吉さんは、バリバリのキャリアウーマンって感じで、スーツを綺麗に着こなしていた。    綾吉さんと、別室へ行き、2人でスケジュール調整することになった。他の人たちは、情報交換という名の歓談中で、私たちだけ、会議室から出れた。廊下にでて、ほっとした。  仕事に集中できてなかったから、丁度、気持ちの切り替えがしたかった。  ミーティング室で、改めてお互い自己紹介をした。女性同士なので、さっきより、話やすい。 「綾吉です。企画部に来て2年目です。来る前は、マンションの販売の営業アシスタントしてました。これから3か月間、宜しくお願いします」 「伊藤です。入社して来月から4年目になります。ずっとこのマーケティング部にいますが、社内の業務がメインで、他社との合同のお仕事は初めてです。ご迷惑をお掛けするかもしれませんが、宜しくお願いします」  綾吉さんとの打ち合わせが済んだころ、岬ちゃんが、お茶とお菓子を持ってミーティング室に入ってきた。  目をきらきらさせて、おしゃべりしたくてたまらないオーラを私に出す。待てをされた子犬みたいで、その姿に笑ってしまう。懇親会のお店への移動にはまだ時間があるから、少しならいいかも、と岬ちゃんを紹介をすることにした。 「私の後輩の岬です。こちらの社にいらっしゃった時に何かわからないことがあれば何でも聞いて下さい。欲しいものとか、飲み物の要望とか、何でも言って下さい」 「岬です。コピーとか、雑務も、お手伝いしますので、声かけて下さいね」  岬ちゃんはニッコリ笑う姿が可愛い。私には、癒し系の後輩で仕事の仕方も丁寧でいつも助けてくれる。愛嬌があって、どんな人の懐にもすっと入り込める。 「ところで、綾吉さんの会社のチームリーダー、イケメンですね。綾吉さんも美人だし、美男美女の多い会社なんですか?」 「ありがとう。でも、そちらのチームのメンバーも素敵よね」 「えー、石川課長は既婚者だし、後はそうでもないじゃないですか?」 「ちょっと、岬ちゃん、それは酷いと思うけど、しかも、社外の人に」 「ふふふ、大丈夫よ。キャピキャピおしゃべり、久々だから、私も楽しいわ。男性が多い職場だから、女子トークできないのよね。うちのチームで既婚者は、田坂さんだけ。他は独身だけど、笹木くんは恋人いると思う。この間、私、彼氏と結婚指輪買いにジュエリーショップに行ったんだけど、婚約指輪選んでるところ見たのよ。あと、三井くんは彼女いたと思う。他のメンバーはフリーのはずよ」 「やっぱり、ちょっといいなーと思う人は、彼女いるんですね。納得。綾吉さんは、結婚指輪をご購入ということは、ご結婚決まってるんですね。羨ましいです。出会いとか恋話聞きたいです。あーでも、今日の懇親会はチームの人限定なので私は参加しないんです。残念です」   「岬さんは、フリーなの?可愛いから彼氏いそうだけど」 「こんな可愛い彼女いたのに浮気したから、先月別れたんです。だから、募集中なので、お勧めの方がいたら、宜しくお願いします。あと、先輩もフリーなので宜しくお願いします」 「わ、私のことは、いいのに・・・」  2人は、懇親会の時間まで、綾吉さんと岬ちゃんは、キャピキャピ女子トークをして楽しそうにしてたけど、私はその輪に入れなかった。  さっきの綾吉さんの話が頭から離れなくて気持ちが沈む。笑顔を張り付けて、女子トークを聞いてるフリをしながら、やっぱりな、と思う。  陸兄、結婚適齢期だもん。  婚約指輪かぁ。結婚の報告を、直接、聞くのは嫌だな。笑って、おめでとうって、言えない気がする。ああ、今日は、私の誕生日なのに失恋とは。もともと失恋予定だったのを、先延ばしにしてただけだから、仕方ないけど。  結婚、そっかぁ、陸兄が結婚・・・。  今日の懇親会、気が重いな。  
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