5 side加奈子④

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5 side加奈子④

 お腹空いて、目が覚めた。今、何時だろう、あれ?ここ何処だろう?と、頭が覚醒してきたら、陸兄とベッドにいた。  陸兄は、もう起きていて、私をずっと見ていたみたいだった。陸兄と目が合って、昨夜のことを思い出した。そしたら、だんだん顔が赤くなっていくのが自分でもわかった。昨日、数えきれないくらいキスをした。  指で唇に触れたら、少し痛みがあった。どんだけ、キスしたんだろう。恥ずかしくて、布団を被ろうと引っ張ると、自分が全裸なことに気付いた。 「喉乾かない?」  そう言って陸兄は、ベットから出てペットボトルのミネラルウォーターを渡してくれた。陸兄は、パンツだけは履いてた。布団で身体を覆って起き上がる。ごくごく水を飲んで、一息ついた。 「10時だよ、お腹空いたよね。何か食べる?」  何でもなさそうに自然に話す陸兄。いつから起きてたんだろう。優しく私を見てる。私は居心地悪くて。 「・・・家、帰ろうかと」  私が話してる途中で洗濯機がぴーとなって動き出した様子で、陸兄は、ニヤリと笑った。 「洗濯機、タイマーかけてたんだ。加奈子の服も入れちゃった」  陸兄の言葉に、え?と、固まってしまう。私、全裸なんですけど。何も言わず睨むと。  陸兄は、ニヤニヤしながら、「新品だよ」と、袋に入ったボクサーパンツと、スウェットを渡してくれた。シャワー浴びるように言われて、バスタオルも渡される。  私は、何も言わず、バスタオルを身体に巻いて浴室にこもる。シャワーと言われたけど、浴槽にお湯が張ってあった。湯船に浸かると、また、昨夜のことを思い出してしまう。  陸兄、すごく優しかったな。彼女には、こんなに優しくしてたんだと思うと、涙が出てきた。私の知らない人みたいだった。  陸兄と、キスしたの、初めてだったな。今まで、キスなしだったもん。好きな人とキスするって、やっぱり、幸せな気分になる。私には、幸せ時間だったけど、陸兄は婚約者がいるのに、何でこんなことしたんだろう?  そんなこと考えたら、また、涙が出て止まらなくなった。はぁ、初恋を拗らせてる。  ここ数年、陸兄を忘れようとして、いろいろしてたのに全部無駄になってしまった。忘れたいと思ってたけど、忘れたくなかったんだと、自覚する。  昔、『失恋につける薬』って、本読んだけど、いろいろ書いてた最終結論、『薬は時間』だったなぁ。本代返せ、と思ったけど、今も昔も、『時間』なんだろうとは思う。時間なんだろうと思うが、その時間は、私はどれぐらいなんだろう?長過ぎる。  忘れるのに、好きになった時間かかるのなら、終わりが見えない。源氏物語の六条御息所みたいになるのは、嫌だな。  あと、距離。離れたら、離れただけ、良い気がする。幼馴染みじゃなければ、そのまま他人で終わって、会わない人もいるんだろうな。逃げられないなら、どうするのが正解か、誰か教えて欲しい。世の中の人がこんなに恋して、恋愛ドラマや映画もたくさんあるのに、正解がみつからないなんて。。。  ユキ、助けて、どうしたらいいかわかんない。    ユキは、私が陸兄を好きなのを知ってたと思う。はっきり言われたことは、ないけど、私の失恋を和らげようと、いろいろしてくれた。遠回しに陸兄に彼女が出来たこととか、私の事は、妹みたいな存在だと思ってると教えてくれてた。  陸兄とユキとの3人の時間は、心地よい時間だった。でも、小6で、ユキが白血病を診断されて、陸兄もユキも私も余裕がなくなっていった。  神様は酷い。悪い人がいっぱいいるのに、何でユキを選んで連れて行ったんだろう。ユキを返して欲しい。  ユキだったら、何て言うだろう。仕事や他のことなら、私のメンターとして、いつも、こころの中で、相談してた。ユキは、いつも、大丈夫って言ってくれて、次に行けるのに。  流石に、陸兄の相談はしにくい。陸兄はユキの身内だもん。しかも、中学生のユキに相談しにくいネタでもある。  でも、ユキなら、ただただ、泣かせてくれそう。大泣きして、スッキリするパターンかな。家に帰って、泣ける映画でも3本ぐらい見たら、浮上できるかな。  ユキ、ユキが言ってくれたようには、世の中上手くいかないよ・・・。
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