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「色々思うことはありましたけど、沢田さんは償いをしたかったんです。その機会が、因果関係が立証されなかったことでなくなってしまった。変な話だと思いますけど、わたしはその気持ちと姿勢に報いることにしたんです。わたしはもう、最初の一年で許しました。でも、沢田さんは自分が死ぬまで続けると決意しています。その意志は固くて、わたしでは解きほぐせません」
あの冷たい父に、それほどの覚悟があるとは思わなかった。息子ではなく、会社の部下へ向けた熱い気持ちには敬服したいが、その気持ちを何故隠し続け、そして自分の息子には向けなかったのか。それを知りたくても、もう遅い。
「沢田さんは毎月一回振り込んでいました。沙苗さんにはわからないようにわたしが受け取ってきました。でも、あの夜以降なくなってしまったんです。何だかお金を無心しているみたいで何も言えませんでしたけど」
渡辺は現況を知ろうと、目で訴えかけてくる。ごまかすことは難しくない。ただ黙っていれば良い。そのうち訊いてみますとでも言って、逃げれば良い。渡辺はきっと、電話をかけてこない。こちらから何も言わなければ、渡辺とつながらなくて良い。
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