第一章 5
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まくし立てた幸雄はその場を逃げ出した。ドアベルの音に続く声はない。必死で走って改札へ飛び込み、自動改札の扉に阻まれた。 長い間使っていなかったパスモには片道分の金額しか残っていなかった。それが減ってしまうのが怖い。そんな余裕のない人間に介護などできるわけがない。だから父は、家にいられないと思ったのだろう。 今の状況が互いにとって一番幸せだ。幸雄は二度と渡辺には連絡しないと決めた。
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