清潔な鳩

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 通学路には鉄の塊がそびえ立っていた。  鉄の塊にはいつも白い鳥が留まっていて、わたしはその生き物をずっと白鳥だと思っていた。  白鳥は春も夏も秋も冬も鉄の塊の中頃に止まっていて、微動だにしなかった。だからわたしは、あの白鳥は見えない位置で双肢を太い針金でぐるぐる巻きにされ、強制的に鉄の塊にくくられているのだと確信していた。  いつか気が向いたら助けてあげよう、と考えていたが、結局その“いつか”は訪れることもなく、気づくとわたしは四年生になっていて、季節は夏の手前で、久しぶりに雨の上がった午後、鉄の塊の下で白鳥は泥まみれで死んでいた。
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