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正体不明
「うーわっ!!!」
驚きが背中からやってくるのは、唐突に現れたと言う事実と、目の前の少女の姿のせいだった。
「ちょっ!なんでそんな離れる!私は怪しい人じゃないよ!人でもないけど!なんつって…」
面白くもないことを言う目の前の存在。
僕の通う高校の女子生徒が着るセーラー服姿で現れたロング髪の少女。故に胴体までは何事もなかった。ただ、スカートを通り過ぎた下半身からだ。それが問題だったんだ。
白い肌な少女の脚は、浅瀬の透明な水に馴染んでいる。でもそれは、馴染み過ぎていたんだ。
「く、くるなぁー!モンスター!近づくな!」
僕に文句でもありそうな不満気な少女の表情と、無防備にも水に流れて近づいてくる様は、この街で一生を過ごすと言う根強い僕の心を簡単にへし折っていた。
「ちょっ、まって!話そ!大事じゃん?話し合いってさ!」
「だまれ!モンスター!うわっ、マジでやばいから、ちょ、え?なになに?いや怖い怖い!はっ?脚は?うわっ!ないないない!」
手前のモンスターに対して、無意味だと理解しているけれど、混乱している脳内を巡らせた結果。距離をとって、ばしゃばしゃと、それも激しく水をかけることしかできないでいた。
「話をっ…て!海水かけんな!」
「いや!むりむりむりむり!」
見苦しいとは思うが、勘違いしないで欲しい。僕は今、ただ冷静ではないだけだったんだ。いや、これが当たり前の反応であり、正解だろう。
きっと皆んなだってこうなる。
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