流れる僕ら。

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 「宿題めんどくさいよねー」 僕の母さんが経営しているカフェ店。テーブルを四人で囲い座って早速のこと、夏休みに対しての文句が二ノ宮の口から漏れた。 「うん、茜ちゃんは先に終わらせちゃうタイプ?」 そう天野が控えめに問うと、少し悩むようにして二ノ宮が応える。 「うーん。弟にやらせる」 「クズ姉貴やん」 「だねっ」 進藤に続いて僕も話に加わる。  店内に流れる聞き慣れたBGM。 店内のクーラーに浴びながら涼しさを感じるのが一番に心地いい。 海辺の方向に合わせて、その景色が見えるようなガラス張りになっている。だからか、他のカフェ店よりも落ち着く感じはしない。まぁ、他のカフェ類似の店に入ったことがないから比較はできないけれど。  この時期になると観光客も増え、僕の夏休みは店の手伝いと宿題、それと友達と遊ぶことで忙しい。 「おまちー」 この店のアルバイトをしてる女子大学2年生の大崎 あずみさん。僕らが注文した飲み物を運んできた。  「生きかえるわー」 進藤と二ノ宮はバニラフラペチーノ。 君は抹茶フラペチーノ。 僕はキャラメルフラペチーノ。 この4人で、ここで他愛のない話をする時はいつも、それぞれが毎回決まった同じ飲み物を頼む。この街限定のフラペチーノもあるけれど、それは僕らの口には合わない。用は観光客向けの物なのだ。  「夏休みさ、みんなで東京行かない?」 普遍的な二ノ宮の一言。 それまでどうでもいい話をしていた僕らの頭の中。突然に現れた一つのその言葉に、いったいどれだけ現実を帯びている話なのか、それを理解する為に沈黙した。
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