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はじまり
海に囲まれた僕の街。
こんな街に住む皆んなは、きっと上京したがってる。それは何かの夢に惹かれているからなんだろう。でも僕は、この場所に物足りないものなんて感じないし、生涯この場所にとどまっていても文句は立たないと思ってる。
綺麗で透明な海の浅瀬を見れるんだから。
それだけでいいんだ。
高校2年目、1学期の終業式を終えた後、制服のまま直ぐに海辺に来ていた僕。
他のみんなはと言えば、きっとこの海を見飽きていて、きっと写真撮影なんかに熱中している頃だろう。そう思いながら、1人で砂浜に座り込んで波の音を聞いて、今日も同じ光景と、しつこい以上に熱い日差しに目を眩ませている。
きっと皆んななら、水面で動く波が捉えて反射した日の光を同時に浴びてしまい鬱陶しく思ってしまうのだろうか。でも僕は浅瀬を見ているから大丈夫。
人間関係はそこそこ、高校での成績もそこそこ。特に将来の夢はなくて、母親が経営してる海辺のカフェの手伝いをしながら暮らしていければいいなんて思う。
「それがいい」
僕の声は誰も聞いていないけれど、1人でに自分にそう解いてみた。
「君は、私を知ってる?」
隣で聞こえていた波の音に紛れた少女の声。
咄嗟。僕が声に向いたと同時。
いつしか望んでいた。
そんな不思議な時間が始まる気がしていた。
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