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「なんだ、これ」
思わず変な声がもれた。
四月某日、早朝。学校に着いた僕が下駄箱を開けると、黄色い封筒が入っていたのだ。
これはいわゆる、ラブレターというものなんだろうか。また、なんとベタな。
岡本悠真、高校三年生。彼女居ない歴=年齢の僕にも、ちょいと遅めの春がやって来たということなのだろうか?
思えばここまで長かった、と思わず感慨に浸ってしまう。モテない男というのは幾つか特徴があるんだ、とたびたび親友にもからかわれてきたが、差し詰め僕の場合は消極的なことだろうか。
決して無口とか暗いという訳でもないのだが、とかく女の子を前にすると上手く喋れない。というか、受身になってしまう癖がある。
そんなんだから、優柔不断で頼りない印象を相手に与えるんだ。無駄に女ウケしそうな端整な容姿を持ちながら、お前がモテない理由はその受身体質にある、と耳にタコができるほど親友にも言われてきた。
ところがあれ? どこを見ても、差出人の名前がない。
差出人の名前が無いなんて、これはちょっとおかしくないか? もしかしてこれは、たちの悪いイタズラかなんかじゃないのか?
とたんに不安になってきた僕は、周囲の目を気にしながら、封を空けてみることにした。
「なんだ、これ」
出て来た便箋に目を落として、先ほどと同じ台詞がもれた。
『日曜日。花見祭り。13時。案内板の前』
書かれていたのはこれだけ。暗号かなにかか? これは?
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