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「あ、やっぱり彼女なんだ。引っかかった」
「鬼姉ー!!」
ジタバタしている俺と、実に楽しそうにそれを見ている明日菜を、父さんと母さんが生温かい視線で見守っていた。
「いつから付き合ってんの?」
もう、明日菜は全部俺のプライバシーを明るみに出すつもりだ。容赦がない。
でも、きっと下手に隠しておいてもバレたときのダメージがデカくなるだけだから、俺は観念して正直に答えた。
「入学式の日に、告白された」
「入学式ー!? 中学一緒の子?」
「違う。……その日に昇降口で26番目に会った人が運命の人って占いで言われたから、って」
「なにそれ、ウケる。それで? そんな酷い理由なのに付き合ってんだ」
酷い理由、と言われて俺はカチンときた。
それだけだったら、例え「お試し」だろうと付き合ったりしてない。
俺があの時「お試しなら」という答えを出したのは、彼女が凄く真剣だったからだ。
「馬鹿にすんなよ。彼女が真剣だったから、お互いに全然知らなかったけど、とりあえずお試しでいいならって付き合ってんだよ。図書館行って悪いかよ、俺たち、ちゃんとお互いのこと知ろうとしてる途中なんだよ!」
俺の剣幕が凄かったのか、明日菜がピタリと笑いを止めた。
「青春してるー」
「お前だって同じ高校生のくせに!」
「次はさ、図書館とかじゃなくてショッピングにしときなよ。ウィンドウショッピングでも楽しいし、あんた服見立てるの割とうまいから。アクセサリーの一個でも買って上げたら喜ぶよ」
「お、おお?」
明日菜は、普通の顔をしていた。俺の事をからかっているわけでもなく、罠に掛けてやろうという顔でもなく、普通に夕飯を食べているときの普通の顔。
これは……素直にアドバイスだと受け取っていいんだろうか。
俺が苦悩している間、父さんと母さんは顔を見合わせ、「大きくなったなあー」なんて言い合っていた。
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