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「おい」
家の前で足元を見ながらげんなりしていた私の上から、急に声が降ってくる。
「きゃあっ!!」
驚いた衝撃で足元がふらついて、危うく滑って転んでしまいそうになった。
「お前があんまり出てこねえから今日はもう行かないのかと思ったよ」
「別に毎朝待っててくれなんて、私頼んでないわよ」
私は家の鍵を閉め、先に歩き始めた彼の背を追う。
「登下校まで女の子たちと一緒じゃ、流石の俺も疲れるんだよ」
そう言いながらなにかをよけるように、彼はヒラヒラと手を振る仕草をして見せる。
私は魔除けか!?
私は呆れて開いた口を塞ぐことができないまま、無言で非難の目を向ける。
「そんなことに私を巻き込むくらいなら特定の彼女でも作ればいいじゃない、
女の子と中途半端な付き合い方をするからそんなことになるのよ」
「お前そんなこと言ってると本当に俺に彼女ができたときに地味に傷ついたりとかするぞ」
「あるわけないでしょ」
「断言かよ」
夜空色の艶やかな髪に、さらりと透き通った肌。
白い空気が、彼の紺色の瞳を光らせる。
いつも嫌々締めている学校指定の赤いネクタ…イはもうすることすら辞めてしまったようだ。
この 久我 湊 こそ
私、 瀬川 夕梨花の生まれた時からのお隣さん。
幼なじみという切っても切れない関係、私たちは何をするにも一緒だった。
…といえば聞こえはいいけれど。
時に遊び相手、時にはおもちゃ。
最近に至っては女の子から湊をガードする身代わり。
とまあ、この17年間、たまには理不尽な仕打ちを受けることもしばしば。
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