2:お父さん

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 何度説明しても、結局私はいつも皆に痛そうな顔をさせてしまった。言い方が悪いのだろうかと思い、自分なりに工夫もしたがほとんど効果はなかった。  今日もだめだった。お医者さんだというその男の人は、私の話を聞き終えると、そっか、と言って手元の紙に何かを走り書きし、やはりすごく痛そうな顔をした。お前はとことんだめな子なのだ、と言われているような気がし、悲しくてたまらなかった。父に悲しいと伝えて、私の気が済むまで慰めてほしかった。私はもう何日も知らない場所で寝泊まりさせられていて、名前も知らない人から食事を与えられ、学校には通わせてもらえず、父にも会わせてもらえていなかった。 「お父さんとはいつ会えますか?」  タイミングを見計らって、私はお医者さんに訊ねる。お医者さんは少し黙ったあと、すーっと内側に入ってくるような、穏やかな波のような声で、 「茜さんはもう、“そんな人”とは会わなくていいんですよ。これから茜さんは、自由になるんです。自由、とは、好きなことを好きなだと言っていいということでもあるし、嫌なことは嫌だとはっきり言っていいということでもあります。茜さんはもう、“そんな人”のことなんてきれいさっぱり、忘れてしまっていいんです。いや、そうするべきなんです。茜さんが“そんな人”のことを忘れたって、誰も、茜さんのことを責めたりしないんです」  静かに私の父を断罪した。
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