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斎場に着き、ひなたの棺が玄関を通る。
二度と出てくることのないひなたを思い、俺は涙を流した。
まもなく、ひなたは灰になる。人としての姿を天に帰してしまう。
その時になって・・・やっと翔が斎場に現れた。
「すまん・・・」
たった一言だけ俺に告げて、立ち尽くしていた。
本当なら・・何を今更!と怒鳴るところだろうか・・
追い返し、ひなたに会わさずに終わらせるのが正解だろうか・・
でも、俺はそうはしなかった。
・・・できなかったと言う方がいいかもしれない。
何も言わずに翔を招き入れ、ひなたの最期の顔を見せることにした。
「なあ・・翔。」
おもむろに俺は翔に声をかける。
「なんだ?」
「ひなた・・最期に何て言ったと思う・・?」
「・・・・」
「命が終わる最期の瞬間に・・ひなたは、『ありがとう・・』と言ったんだ。」
「・・・そうか。」
「『ありがとう・・・壮真』ってな・・・」
「・・・・え?」
「いつわかるようになってたのか・・・もしかしたら、ずっと気づいていたのか・・もう確認しようがないけど・・・ひなたは、付き添っているのがおまえじゃなく・・俺と気づいていたんだ・・。」
「そう・・・・なのか・・・」
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