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2.かける
ひなたの見舞いを終えて、俺はあいつの元へ今日も足を運ぶ。
「おい、翔!いるんだろ?」
俺の声で部屋の奥から鈍く反応している物音が聞こえ、部屋の扉は開けられた。
「また、おまえか・・・。壮真。」
「なんで、ひなたの見舞いに行ってやらない?いい加減にしろよ・・。
ひなたにはあとどれだけ時間が残されているかわからないんだ・・。」
「会いたくないんだ・・。」
「どうして!?」
「毎日少しずつ壊れていくひなたを見るのが・・すでに記憶なんかも曖昧で、おまえと俺の区別もつかなくなったひなたに会うのが・・つらいんだ。」
俺と翔、ひなたは同じ養護施設で小さなころから育った。
親も兄弟もいない俺たちにとって、翔とひなたは兄弟と呼んでいいほどの関係だったかもしれない。
でも、いつしかお互いが男女であることを知り、認め、意識するようになって、ひなたは翔のことを愛するようになった。
翔はひなたの気持ちに応えた。
高校を卒業して、施設を出て、二人は一緒に暮らし始めるようになった。
そんなささやかな幸せは1年もしないうちに病魔によって侵されてしまった。
「おまえ、ひなたの彼氏だろうが!?最期までひなたについてやれよ!
本当はひなたは、俺なんかじゃなく、おまえが来るの待ってるはずなんだ。
最期の瞬間にいるのは、俺じゃダメなんだよ。」
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