0人が本棚に入れています
本棚に追加
「じゃあ、なんで・・おまえは俺のかわりに病院に行ってるんだ?
おまえがひなたのことを好きだったのは知ってる・・。そして、ひなたの気持ちを知って、自分から身を引いたのも知ってる。
でも、こんなことになって・・おまえは俺になりすまして、ひなたからの愛情を受けている気持ちになってるだけなんじゃないのか?
おまえは俺と偽ってひなたに会うことで、満たされなかった自分の気持ちを埋めているんじゃないのか!?」
少しヒステリックに翔が叫ぶ。
その言葉に俺は怒りを覚え、翔の顔面を力任せに殴っていた。
図星だった・・・。
ひなたが俺と翔の顔を認識できなくなっていることに気づいた数週間前・・。
右手にも麻痺が出始め、自分できちんと食事もできなくなり、口元からご飯をこぼしつつ食事をしていた頃・・。
翔はショックで声も出ず、その日以来病院に見舞いに来るのを止めてしまった。
その翌日、俺が見舞いに行った時、すでにひなたは俺が『壮真』であることがわからなくなっていた。
俺を『翔』と呼び、俺には見せないような笑顔を見せる時もあった。
俺はその感触を享受していた。
それが偽りの感情であっても・・自分に本当は向けられたものでないと理解していても・・自分で自分を騙すことで、享受すると決めたのだった。
最初のコメントを投稿しよう!