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しかし、正直嫉妬もあったのだ。
本当の翔はひなたに会うことを拒み、部屋に引きこもり、自分の運命を呪っていたのだ。
確かに俺たちは生まれたときから幸運に微笑んでもらったことはない。
むしろ、茨の道を歩んできた印象が強い。
でも、だからこそ・・・
一番の受難を受けているひなたから翔が目を逸らしていることに怒り、そんな翔を今でも求めているひなたを見て・・ひどく嫉妬に狂った。
それでも、俺は望んでいる。
翔がひなたの元に通い、残り少ない時間を二人で過ごすことを・・。
最期の瞬間・・人生最期の呼吸を終える瞬間に、翔が立ち合い、ひなたは愛に包まれたまま天国に旅立てることを・・。
そのためにたとえ嘘であっても、俺は翔を演じると決めた。
怒りや嫉妬にまみれた感情を抑え、二人の愛の最期を見届けるために・・
それでも、翔は頑なにひなたに会うことを拒んだ。
「最期までおまえがそばにいれやればいい。本当はひなたもその方が幸せなのかもしれない。俺みたいな薄情な男より、おまえのように優しい男がそばにいてやるべきなんだよ・・・。」
俺に殴られても、翔は考えを変えなかった。
そのうえ、俺は身を引くとでも言わんばかりの弱弱しい言葉を俺に投げかける。
俺は苛立ち、再び翔の顔を拳で殴った。
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