0人が本棚に入れています
本棚に追加
それから、また少しして・・ある日の早朝のことだ。
「ひなたさんが危篤です・・」
予め伝えてあった俺の携帯に病院から連絡が入る。
これまでにも何度か危ない時はあったが、ひなたは乗り越えてきた。
しかし、乗り越えるために確実に体は弱り、話すこともできないまでになる。
翔ではないが・・・正直、俺も見ているのはつらくなっていた。
そんなひなたの何度目かの危篤。
俺は今日はダメかもしれない・・そんな予知のような・・虫の知らせのような・・あやふやではあるが、信じてしまうしかない予感を感じていた。
病院に着くと、いつも以上にひなたの周りには機械が持ち込まれ、体には何本かの管がつけられている。
その凄惨な姿に、今までにないほど危険な状態なのだと理解した。
看護師に促され、ひなたの傍に行く。
ひなたは少し目を開けているものの、何かを捉えているかどうかわからない。
口が少し動いているものの、声は出せない様子だった。
望まぬ結末はもうそこまで来ている。
俺はただ、ひなたの手を握りしめ、祈った・・
ひなたがもう苦しむことないよう・・
ひなたがもう悲しまずにすむよう・・
翔として・・最期まで寄り添うことを許してもらえるよう・・
ひなたの拍動が徐々に弱っていき、医者たちも慌ただしくなる。
そんな中、ひなたはふと視線をこちらに向けた。
「ありがとう・・・」
感謝の言葉をか細く告げ、最期に名前を呼んで・・・
ひなたは二度と目を開くことはなかった・・・
最初のコメントを投稿しよう!