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1.ひなた
「いつもありがとうね、翔。」
ひなたはそうやって笑いかける。
「気にすんなよ。」
俺はぶっきらぼうに答える。
それがいいことではないとわかっている。
でも、俺はそれをやめられない。
「今日は具合どうだ?」
「ん-・・少し頭が重いかな・・。」
ひなたが額に手を当てて、少し首をもたげる。
ここ最近の彼女のよく取る仕草だ。
それは数か月前、一緒に食事をしている時に何気なく呟いた彼女の言葉から始まっていた。
「今日・・お医者さんから余命宣告受けちゃった・・。あと4か月くらいかもって・・。」
元々持病の偏頭痛が最近ひどいと言ってたひなたは、俺や友人の勧めもあって、やっと重い腰を上げて病院に行ったのだった。
偏頭痛だと思っていたものは、実は脳腫瘍の症状の始まりだった。
頭痛から始まり、視野狭窄、歩行困難・・みるみるうちにひなたの病状は悪化していった。
俺やひなたは養護施設で育った。
そのため、こんな時になって頼る家族はいない。
お互いを家族代わりに支えあってきたのだ。
ひなたはすぐに病院に入院し、身の回りのことは俺たちが行った。
その後、家族の代わりとして、ひなたの意向もあって俺たちは医者から病状を聞くことになった。
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