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チャプター1/豪女と剛女の起と承
その0
祥子
”ジャッカル・ワン”でキューを握っていたら、肩をたたかれた
振り向くと、南玉連合ナンバー2の矢吹さんじゃん!
「えらく大きな背中だと思ったら、あなただったのね、やっぱり…」
「ああ、こんちわ。ココ、よく来るんすか?」
「ううん。先月、道場の先輩に誘われて初めて来てね。なんか、この雰囲気、フィットしちゃって…(笑)」
この人、笑顔がなかなかいいな
まあ、意外だったわ(苦笑)
...
玉突きは初心者という空手2段に、私はガラにもなく教官役で30分ほど台に張り付いたわ
「いやあ、なかなか難しいわね。ビリヤードって。でも、奥が深くて病みつきになりそうだなあ…」
「はは…、まあ、カウンターで一杯やりましょう」
「カンパーイ!」
ジンジャーエールで同い年の先輩後輩は杯を交わした
へへ…、無論、ダブリの私が後輩ね…
...
「あれ?この曲、スライダーズじゃない?」
おお、硬派の空手女もロックがわかるってか…
「へー、矢吹さんが、”野良犬にさーえ~”を知ってるなんてねー。ハハハ、こりゃ、愉快だわ」
この人、ここでキャハハって笑った
...
私たちの会話は思いのほか、弾んだよ
「…ああ、荒子とのストリートファイトね…。あのさ…、みんな結末がナゾとかって話になってるけどね…。当たり前よ。朝の登校時に道端で乱闘だったんだけどさ…。すぐ、警察が来るぞって、誰かが叫んだら、私たちの回り、誰もいなくなっちゃって…。要はその後の目撃者、ゼロってことよ」
どひゃーってとこだな、こりゃ…
「…でさ、その後も組み合って膠着状態のところ、ホントにポリちゃんが来てさ…。まあ、ドローよね。でもねえ…、わざわざ当事者が解説しまくる気にはね…。それで、まあ、今じゃ都市伝説ってとこよ(笑)」
私はこの話を聞いて、腹を抱えて笑っちゃったよ
いいや、この人…
...
「矢吹さん…、私は麻衣と大雨の中、1対1で戦ったが完敗だった。奴には学校まで面倒見てもらったし、まあ、この後はアイツ側で行きます。どういう形でまみえるかはわからないですけど、あなたのことはすっかり好きになった。それは承知しといてください」
「…そうね。たぶん、あなたと仮に戦うとしても、あまり”あれ”はないかな…。うん、じゃあできるうちに、”これ”、しときましょう」
彼女は右手をすっとカウンターに乗せた
私はその掌をすくって、ちょうど腕相撲する形にして、ぎゅっとその手を握った
まあ…、二人は顔を見合わせてさ、頬をほころばせてたよ
しかし…、これから一か月もたたないうちに、私らは敵味方で激突する日が廻ってくるんだ
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