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「だいたい友樹はね、ちょっと会ってない間に、いつも勝手にかっこよくなっちゃうのよね。今日も、昔大学で再会したときも、かっこよくなり過ぎてて、いっつもドキドキさせられるわたしの身にもなってよね」
「ちょ、重たいって、若菜。いきなり乗ってくるなって。……それに、それはこっちのセリフだ。若菜だって、大学で会った時、めちゃくちゃ綺麗になってたじゃないか」
「え?本当?本当にそう思った?」
はじめて聞く話に、わたしは圧し掛かっていた体を起こして訊いた。
わたしの下で少し顔を赤くさせた友樹は、「本当だって…」と、降参のポーズをとる。
「あまりに綺麗になってたから、俺、あの時尋常じゃないほど緊張してたくらいだから」
どこか懐かしむような友樹の告白は、わたしを有頂天にさせた。
「そうなの?じゃあわたしと同じだったんだ。わたしもあの時すごく緊張してたの」
「そんな風には見えなかったけどな」
からかい口調で異を唱えてくる友樹に、手近にあったふわふわの枕を叩き付けて抗議する。
「緊張してたの!だって、友樹はずいぶん変わっちゃってたし敬語だし、もしかしたら人違いかも……って、不安もあったんだから」
すると友樹はおや?という様子で、枕の隙間から眉をヒクリと動かした。
「最初から俺があの時の男だって分かってたんじゃないの?」
「それは、ええと……確かに、パッと見てあの時の男の子だとは思ったんだけど、友樹があまりにも他人行儀だったから自信がなくなっちゃったの。でも途中で、ああやっぱりあの時の男の子だって分かったよ?」
「へえ……。なんで分かったの?」
わたしの記憶を辿る物語は、一気に友樹の興味を引き付けたようだった。
「だって、友樹が―――」
わたしは特に深く考えず普通に答えかけたが、ふいに、成瀬くんとの会話が頭に浮かび、その先に告げるはずだった言葉を飲み込んだ。
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