再会

3/6
前へ
/101ページ
次へ
「それで今どこにいるんだ?……ホテルの部屋?取ってもらったのか?………ああ、分かった。それまで待てるか?」 何やらただごとではなさそうな雰囲気に、わたしの気も急いてしまう。 成瀬くんは通話を終えると、崩れた顔色でわたしに説明してくれた。 「妹が打ち合わせ中に体調を崩したらしい。今日は一人での打ち合わせだったから、たまたま近くにいる俺に電話してきたみたいなんだけど、ちょっと行ってきていいかな?」 「もちろん。早く行ってあげて?」 「悪い。様子を見たら戻ってくるから、待っててくれる?」 「わたしのことは気にしないでいいから、早く行って」 「ありがとう」 成瀬くんはそう告げるとすぐに妹さんのもとに向かったのだった。 迷惑にならない程度の駆け足で去っていく成瀬くんに、わたしの心配も膨らんでしまう。 「たいしたことないといいんだけど……」 成瀬くんの姿が見えなくなってから、ひとり言としてこぼれていた。 詳しい状況は分からないけれど、病院に運ばれていないことを考えると、少し休めば回復するのだろうか。 もしそうなら、成瀬くんはそのまま妹さんと一緒に帰宅するだろう。 その時はここの支払いはわたしが引き受けて、二人をタクシーに……そんなことを考えていた。
/101ページ

最初のコメントを投稿しよう!

164人が本棚に入れています
本棚に追加