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その人は再び動かないままじっと池を眺め続けている。
何かを考えているのか、何を感じているのかぼくには計ることが出来ない。
ただ一身に何かを見つめそこにいる。
それだけなのに人の目を惹く。
通りかかる誰もが一瞬足をとめ、吸い込まれるようにその人を見た。しばらく見惚れている人も。
だけど誰もぼくのように話しかけはしない。
まるで美術館に収められているよくできた作り物を鑑賞するようにしばらく見惚れ、そして次へと移っていく。
頭の上にあった太陽がゆっくりと角度を下げてくるとその人はやっと立ち上がり、すっといなくなった。
ぼくを一瞥することもなく。
ふ、と息を吐いた。
ただあの人の隣に座り続けていた。数時間も、ひたすらに。
それは翌日も、その翌日も続いた。
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