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「―――ふたりのことだから、俺だけの意見で決めたくない。桐の希望も入ってる部屋じゃないと、きっと後から不安になる。―――無理強いしたかもしれないとか、ほんとは別々に暮したいと思ってたかもしれないとか・・・、そんな風に」
潤んだ瞳をいっぱいに見開いて、驚いたように桐は俺を見つめて目尻から涙が一粒零れ落ちた。
「―――そんなこと、思うわけない・・」
と、呆然としたように呟き、それから肌を密着させるように力いっぱい俺を抱き寄せる。
俺はとくとくと高鳴る桐の心音を心地好く聞きながら、細くしなやかな背を宥めるように摩り包み込む。
「だったら、ちゃんと桐の希望、話してくれる?」
「ん・・・。本当に、やすはると一緒ならどこでも嬉しいの。・・・でも、ひとつだけ、」
一度言葉を切った桐の表情を窺うように、俺は少し身を引き僅かに高い位置にある瞳を見上げる。
無言のまま首を傾げて言葉の続きを促した。
「―――――夜明けのわかる、部屋がいい」
「・・・夜明け?」
「うん、夜明け。――――真っ暗だった空に、朝が近付く雰囲気が・・・好きだから」
――あなたの存在と似てるから。
そう言って本当に幸せそうに微笑んだ桐を見て、俺は、どこが似てるんだ?と首を傾げる。
桐は小さな掌で俺の頬を優しく包んで真っ直ぐに視線を捉え、ほんの少しだけ切なげな笑みを浮かべて言う。
「わたしの、希望。わたしの、光。――――康春は、私に生きている歓びを教えてくれたから・・・。暁の空を見ると、それをいつも感じることができて幸せを実感できるの」
思わず絶句した。俺はそんな大層な人間じゃないぞとか、俺にとっても桐は光なんだとか、言いたい事は山ほどあったけど、それより―――――。
「―――悪ぃ・・、話の続き、また後で・・・ッ」
言葉よりも感情よりも、何よりも先に過剰反応を見せたのはきっと本能。
互いの体温を感じながら穏やかに繋げていた体が急沸騰して、埋めた自身が痛いくらいにズン・・と疼いた。
抱えていた桐の体をそのまま押し倒し、「悪ぃ・・ッ」ともう一度短く告げてその体に覆い被さり、一気に最奥を突き上げる。
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