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「ヴェニー、お風呂入ってきたら?沸いてるよ」
「エメもごまかそうとしてるでしょ。いいよいいよ、せっかくのお泊まりだし朝まで尋問するからね」
「えー…やだなぁ…寝ようよ…」
心底嫌そうな顔をするエメを見て、ヴェニーがくすりと笑った。
「この年になって学校なんてさ、やっぱ不安だったんだ。エメと友達になれてうれしい」
唐突に出た真面目な言葉に、思わず固まる。ヴェニーはまた不敵な笑みに戻って立ち上がった。
「友達のことって知りたいじゃん。だから朝まで質問攻め。じゃ、お風呂借りるねー。学長先生―!お風呂借りるねー!!」
書斎から「大声出すな」と困ったような声が聞こえ、ヴェニーは面白そうにくすくす笑った。
「朝まであの調子か?」
ヴェニーが風呂に消えたあと、クラウスが顔を出した。
「さぁ…客間に二つお布団は用意したんですけど」
「なんかこう、適当に眠らせる魔法とかないのか?」
「学校外での魔法使用は禁止です」
「ああ、そうか…面倒だな。酒飲ませるか」
「『先生』、問題発言です。心配してくださってるんですか?」
「君はよく寝る子だろう」
「代わりに客間で寝てくださいます?」
「勘弁してくれ」
「ふふ、」煩わしそうなクラウスに思わず笑みがこぼれる。「冗談です。本当のことを言うと、私、うれしいんです。学校で友達ができて。楽しいです」
「…なら、いいか」
クラウスが頭を掻き、エメの隣に腰かける。頭を掻くのは、考え事をしているときと困ったときの彼の癖だ。
「あまりうるさくしないよう言います。お仕事、終わりました?」
「いや、適当に切り上げて寝る。一人寝は久々だな」
「寂しい?」
「まあな」
「ふふ、」
「なんだ」
「今夜はやけに素直ですね」
「ああも底抜けの人間がいると多少あてられる」
「そうかもしれません」
くすくすと笑うエメを見、不意にクラウスが身を乗り出して唇を重ねた。きょとんとした顔でクラウスを見、みるみる赤くなるエメを見てクラウスもおかしそうに笑った。
「おやすみの先取りを」
「ふ~~~~~~~ん???」
振り向くと、にやにやとした笑みを浮かべたヴェニーが扉から覗いていた。顔を真っ赤にしたエメの「早くお風呂入ってきて!」とクラウスの「早く風呂入れ!」が同時に響き、ヴェニーはまたにやりと笑った。
「お二人さん、夜は、お・し・ず・か・に」
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