第1章

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女の子と別れてから2人で駅に向かう。 「龍ちゃん、一緒に帰るって言ってもアパート方向逆じゃね?」 「うん、そうだね」 「駅まで一緒にって意味?」 「いや、僕も今日は実家に帰るよ」 「マジで?よっしゃっ!」 本当は実家に帰る予定なんてなかったけど…何故か、女の子と仲良さげに話している美波くんを見て、不安になってしまったんだ。その不安を取り除きたくて出来るだけ一緒に居たくなった。 「ちゃんとマフラーしてくれてんのな!」 「うん、このマフラー暖かい」 「クチコミ良かったからな」 「…クチコミとか、調べて選んだの?」 「うん」 それじゃ、あのジンクスの事も知ってる? 美波くんはそれ以上何も言わなかった。僕もそれ以上聞けなかった。 「そういえば、どうしてバイト、あそこの居酒屋にしたの?」 「学校から近いから。後、さっきいた女子の紹介で入った」 「紹介?」 「あそこの店長、あの子の父親で、働けるように頼んでくれた」 「そうなんだ、…仲が良いんだね」 「そこまで仲良くねーよ。面接面倒だから頼んだだけ」 「そうなんだ」 彼女は、そうじゃないんじゃないの? …なんて言えない。
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