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第2章
「美波くん、進級おめでとう!」
「ありがとう!つーか、別にめでたくないだろ?」
「そんな事ないよ!高校は留年だってあるし、問題を起こせば退学だってあるんだから」
「俺そんな問題児じゃねーよ」
美波くんから貰ったマフラーを使わなくて良いほど暖かくなり、春を迎えた。僕と美波くんの関係性は何も変わらず、頻繁にアパートに遊びに来たり、こうやって手作りの料理を振る舞ったりしている。
「毎日食べたい…龍ちゃんの料理」
「お互い共働きの家庭だから昔は良く作ってあげてたよね」
「俺にとってのお袋の味ってやつ!」
昔からこうやって喜んでくれるから作りがいがあるんだよな。
「美波くん、これ、進級祝い」
「えっ!!?何?プレゼント?!」
「うん、大したものじゃないけど…」
「めっちゃ嬉しい!開けて良い?」
「うん」
僕にプレゼントをくれた時は奪い返してビリビリに包装紙を破いてたのに、今は丁寧に開けている。
「僕が開けようか?」
「いや、良い!綺麗に開けたい」
凄い真剣…
「あっ!これ、財布!?」
「うん、美波くんが今使ってるのって中学生の頃に僕がプレゼントしたやつでしょ?もうボロボロになってるから新しいの」
美波くんは僕が昔プレゼントした服や鞄も大切に使ってくれている。この間美波くんの家に行った時も部屋に小学生の誕生日にあげたぬいぐるみが飾ってあった。
「ありがとう、嬉しいっ!」
「本当に美波くんは物持ちが良いよね!この財布だって、高校生にはデザインが幼いでしょ?」
「良いんだよ、気に入ってたし、龍ちゃんからのプレゼントは全部大切にしたいし」
「…………美波くん…」
美波くんがまっすぐ僕を見つめる。いつにも増して真剣な表情に、時間が止まったように感じた。
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