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「あのさ、龍ちゃん…」
美波くんが何かを言いかけた時、部屋に着信音が響き渡った。
「…美波くんじゃない?電話…」
「あぁ………うん…ちょっと出てくる」
美波くんはスマホを持って、ベランダに出ていった。…さっき、美波くんは何を言おうとしたんだろう?あんな表情、あまり見たことがなかった。
「ごめん龍ちゃん…バイトに欠員出て、行かなきゃならなくなった。1時間後に帰るわ」
「そうなんだ…バイト、忙しいんだね。じゃぁ、早く食べちゃおうか!」
「ごめん、せっかく作ってくれたのに…」
「良いんだよ、プレゼント渡せただけで十分!」
本当は寂しいくせに、大人ぶって余裕なフリをする。自分の弱いところは誰にも見せたくないから、そういう時こそ笑顔になってしまう。
「美波くん、さっき、何を言いかけたの?」
「あぁ、忘れた…なんだっけ?思い出したら言うわ」
「そっか、わかった」
絶対、はぐらかされた…。
結局最後まで思い出せないと言い、美波くんは家を出ていった。
何だろう…何でこんなに切ないんだろう…?
「…行って欲しくなかったな……」
だんだん、僕はこの関係性に満足できなくなっている。我が儘になっていくみたいだ。
この欲求を抑えながらいつも通り美波くんに接する度、1人になると寂しさや切なさ…マイナスな感情に苛まれる日々を過ごして、気付けば夏を迎えていた。
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