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「先輩、遅かったじゃないですか!」
「田口くん、安達さん、ごめん…僕もう帰るよ」
「えっ!!?何したんすか!?来て少ししか経ってないのに」
「ごめんね…また明日会社で」
田口くんに呼び止められたけど、振り向く気力もなくまっすぐアパートまで帰った。
シャワーを浴びそろそろベッドに横になろうとした時、美波くんから着信が来た。
「…もしもし」
『龍ちゃん?今どこ?』
「どこって…急にどうしたの?」
『バイト先に呑みに行くって言ってたから顔出しに行ったのに居なかったから…職場の人達も急に帰っていったって言うし、何かあった?』
「何もないよ」
わざわざ会いに来てくれた…嬉しいはずなのに、今は複雑な心境で素直に喜べない。
『今からアパートに…』
「ダメッ、来ないで!!」
『………え?』
「…あ、ご、ごめん、もうベッドに横になって寝るところなんだ。美波くんもわざわざ来てくれたのに申し訳ないけど、遅くなる前に帰らないとダメだよ」
『あぁ…分かった』
こんなキツイ言葉を言いたいわけじゃないのに、美波くんとどう接したら良いのか分からない…。
『あのさ、今度の土曜日夏祭りあるじゃん!一緒に行かない?』
「夏祭り?もうそんな時期か…」
『仕事休みだろ?行こうぜ!』
「美波くん、学校の友達に誘われてるんじゃない?」
『は?』
「せっかくの楽しい行事、友達と過ごした方が良いよ。僕はその日、休日出勤しなきゃならないから行けないんだ」
『…そっか、仕事なら仕方ねーな!』
「ごめんね。じゃぁ、明日も仕事だから切るね」
『おやすみ』
…休日出勤するほど、忙しい時期じゃないのに。
自分が付いた嘘に、美波くんを拒否したことに心が痛んだ。
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