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第4章
「龍ちゃん、本当にポップコーン買わねーの?」
「だってホラー映画でしょ?食べる余裕ないと思う」
「ん~…じゃぁ、帰りに買って食おうぜ」
「うん、それなら良いよ」
日曜日の映画館はとても混雑していて、ホラーは人が少ないかと思っていたけど昨日ネットで確認した時より席が埋まっていた。
「1番後ろの席買っておいてよかったね」
「だな!背中蹴られたりすると気が散るし、首も痛くならねーし」
階段をのぼっていると、1つ前の席に見覚えがある人が座っていた。誰か認識する前に胸がザワつく…
「あれ?桜井じゃん」
「美波っ!?偶然っ!」
美波くんと同じバイトの女の子…桜井さんって言うんだ。
「あぁ…『龍ちゃん』も来てたんですか」
「…こんにちは」
あからさまに僕を見て不機嫌な表情をする。美波くんと関わるなと言われて、言うことを聞かないどころか付き合っているなんてバレたら何を言われるか…
桜井さんは、きっと美波くんが好きなんだと思う。だから僕の事が嫌なんだ。
「美波はホラー苦手じゃん!無理やり連れられてきたの?」
「ちげーし、苦手じゃないから!俺が観たかったんだよ」
「意外~!!」
後ろを向いて美波くんと仲良さそうに話している姿を見て、平然を装っているけど本当は嫉妬をしている。僕は心が狭いのか…?
視線をそらして前を見ると桜井さんのお友達と目が合った。感情が顔に出ていないか心配になってすぐに笑って誤魔化した。
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