第1章

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「ここ数日本当に忙しかったっすね!」 「やっと落ち着いた感じだよね」 トラブルも解決し、ようやく通常業務に戻ってきた頃、田口くんからの呑みに誘われて久しぶりに居酒屋に来ている。 「先輩って、彼女つくらないんすか?」 「彼女かぁ…いたことないな」 「えっ!!?マジっすか!?じゃぁ、童貞!?」 「そんな驚くことかな?今まで大切に想える子に出会えなかったってだけの事だよ。………いや、昔から出会ってたのに最近までその事に気付かなかっただけかな」 自分が言った言葉に違和感を感じて、すぐに修正する。 写真のどこが変化したか当てるゲームのように、美波くんに対する気持ちは、違和感なくゆっくり、だけど確実に変化していて、気付いた時には最初の頃とは全く違う感情になっていたんだ。 「純愛っすね!男なら学生時代に好奇心から童貞捨てる奴ばっかっすよ!」 「…え……!?そ、そうなの?」 「俺が高校生の頃は、良いなぁって思った子に告白したりされたりして付き合って、ヤル奴が多かったすよ」 「…良いなぁってだけで出来る行為なの?」 「まぁ、高校生なんて性欲の塊っすからね!先輩みたいなのは希少っすよ」 僕の考えが常識だと思っていたけど逆だった? どうしよう…急に不安になってきた。 美波くんは今、高校生で…性欲の塊…!?本人は言わないけど、今年の文化祭に来てって言われて行った時、女の子に囲まれてたし告白くらいされてるよな…。 「先輩っ!別に希少ってバカにしてる訳じゃないですから、ヘコまないでくださいよ!?」 「大丈夫だよ、へこんでないから」 「そうすか?じゃぁ、呑み物おかわりしましょー!」
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