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まるでチンピラか、ホスト崩れだ。
今になって視界に入った連れも、似たような出で立ちである。
それを顔色一つ変えずに眺めた緋凪は、クッ、と嘲るような笑いを返した。とても中学一年生になったばかりの少年のそれとは思えない。
緋凪はおもむろにボトムのポケットへ手を伸ばし、スマートフォンを手に取る。
「お兄さんたち、誘拐未遂及び脅迫の現行犯だよ。ケーサツに連絡しちゃっていい?」
と確認を取っている割には、彼の端末はすでに通話状態だった。美少女然とした顔立ちに似合わず、やると言ったら相手の返答など待たず、容赦なく実行してしまうのがこの従弟の怖いところだ。
「なっ……」
さすがに男たちの顔色がさっと変わった。
「何言ってんだよ! 誘拐って……」
「その女の嗜好だって聞いてるぞ、合意だ!」
「一応訊くけど、そうなの春姉」
「なわけないでしょ、わけ分かんないっ」
「だそうだ。あ、もしもし事件です。従姉が誘拐されそうになってー」
本当に警察と繋がったらしい。ここへ呼ばれたら大変、と顔だけで言った二人の男は、実際には無言のまま大慌てで黒塗りの車に乗り込み走り去った。
同時に、「うわぁあ、すみません!」という悲鳴に近い謝罪が聞こえる。
その叫びのほうを振り返ると、春生の所属校の教師が、緋凪から端末を取り上げていた。
「何でもありません、子どもがいたずらで……はいっ、はいっ、次から気を付けますのでっっ!」
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