21人が本棚に入れています
本棚に追加
/375ページ
Act.1 発覚
その教師から端末を引ったくって確認したところ、トップページはいわゆる『出会い系サイト』と呼ばれるもののようだった。
その掲示板に、春生のバストアップの写真と学校名、本名と下校時間、そして短いコメントが記されている。
『市ノ瀬春生です。趣味は男漁り。一時間三万円で何でもします。下校時間に誘拐しに来てくれると嬉しいです』という文章のあとにはハートマークまで付いている。
「……なっ……んだよ、これ」
「カキコミを見かけたと匿名で知らせてくれた生徒がいてな」
「ソイツは叩かないのかよ! 明らかにこんなサイトに出入りしてるのソイツじゃん!」
「うるさい、部外者には関わりないことだ」
「俺は春姉の従弟だぞ!」
「血縁というだけだろう。さあ、どうなんだね市ノ瀬君」
日が暮れた通りを照らす街灯の光量でも、春生の顔が蒼白になっているのが見て取れる。緋凪から言わせれば、それは決して自身のやらかしたことが露見しての反応ではない。
だが、彼女が震える唇を気丈に動かしてやっと、
「……身に覚えが……ありません」
と言ったのを、教師は後ろ暗いことをしたからだと決め付けているらしい。
「だが現にこうしてカキコミがされているんだぞ」
「こんなの明らかに隠し撮りだろ!」
緋凪は構わず口を出した。
しかし、五十絡みの教師はうるさそうに緋凪を一瞥しただけで春生に視線を戻す。
「さあ、どうなんだね。真実を話す気はないのかね」
「私は真実を話しています」
「市ノ瀬君」
教師が、宥め諭すような口調になる。
「これ一回なら不問に付そうと言っているんだ。正直に罪を認めたまえ」
「見てください!」
ついに春生も声を荒らげた。
彼女は、深緑のハイウェストスカートのポケットから、自身のスマートフォンを取り出し、ズイと教師に突き付ける。
「調べてもらえば分かります。私はそんないかがわしいサイト、今まで出入りしたことありません。検索だって掛けたこともありません。ついでに言えば、そんな写真だって撮ってません」
最初のコメントを投稿しよう!