第37話 ナーティの猛攻

1/1
13人が本棚に入れています
本棚に追加
/156ページ

第37話 ナーティの猛攻

 珠三郎のインカムに、ナーティの声が響いた。 「チョットォ、きりがないわ、こやつ!」  ナーティと疫鬼は、刀と尾で互角の打ち合いを続けていた。  疫鬼は俊敏に穴の中を跳び回り、凶器の尾を縦横無尽に繰り出してくる。  ナーティはすべてを打ち払い、斬り込みながら突きを入れる。  一本の尾が鞭のように空気を裂き、ナーティの頬をかすめる。 「乙女の大切な顔を狙うなんてっ、ワタクシ、もうブチ切れたわ!」  ナーティはすでに体力を相当消耗していたが、アドレナリンが大量に分泌されたらしく、疲労困憊していた肉体にパワーがみなぎった。  村正はナーティのあふれるエネルギーを受け止めると、白銀の輝きを増した。  疫鬼の尾数本が土煙を上げて地中へもぐりこんだ。  先ほど藪鮫に不意打ちを食らわせたように、地中からナーティを攻撃するつもりらしい。 「そうはいかないわよ、この骸骨野郎!」  ナーティの研ぎ澄まされた剣士の感覚が、足元の微妙な振動を捉える。     ズシャッ!    土くれを巻き上げて尾が地中からもの凄い勢いで突きだされた。 「フンッ」ナーティは気合を発し、宙に跳ぶ。  着地するそばから続けざまに鋭い尾が地中から攻撃してきた。  ステップを軽やかに踏み、すべてかわす。  ところが一本の尾がナーティをすり抜けて土に横たわったままの藪鮫に向かった。 「し、しまったぁっ」  ナーティは振り向き叫んだ。  バシッ!  鋭利な槍となった尾が藪鮫の背中に食い込む瞬間、トンファーを回転させたぬえがそれを弾いた。 「お、おばあさまーっ」 「オカマさんやぁ、イッちゃんはこのわしが守るでなっ。  存分にそやつの相手をしてたもれや!」  ぬえは疫鬼の魂胆を察知し、リンメイの元から跳んできたのだ。 「ありがたいわ。  市さまのような殿方を亡き者にしようだなんて、天がお許しになってもこのワタクシが許しませんことよ」  ナーティの太い唇が吊り上った。  白刃をきらめかせて、ナーティの猛攻が再び始まった。                                 つづく
/156ページ

最初のコメントを投稿しよう!