9-351『最&高』

4/4
前へ
/1303ページ
次へ
とにかく今は慎重に行くしかない…………… だってもしも理沙ちゃんの話が全部本当の事なら、英里ちゃんはかつて「彼氏なんかもう一生いらない」って、せっかく可愛いのにそんな事を言ってしまうほど傷付いているんだとか だったらこっちも急げないよ、本当だったらもっとグイグイしたいところだったけど、もしもある種の男性恐怖症みたいな感じで、英里ちゃんの心が【恋】は無理な状態になってしまっていたとしたら、本末転倒になってしまう 色々と経てから英里ちゃんに惚れていた俺は、英里ちゃんに対してはまず確実に奥手男子な俺だった事だろう、しかしだからこそプレゼントを贈ってもらえるような関係を築けていたんだとしたら、下手な冒険をする事でこの関係を壊してしまいたくはない それならもう仕方がない、そう言う事にするしかなかった、そりゃあ俺だって本当はわざわざ自分の方からその手のキャラにはなりたくなかったよ、一度でもお友達枠に入れられてしまったら発展をさせるに大変になるから、それならどうぞ男として認知されるポジションに、俺はずーっと居たかったよ だけどもう仕方がない、つーかそもそも仲良くなるところから目指してしまったのは俺なんだから、だったらそれで良いじゃないか! だって生理的に無理な人はお友達にもなれないんだから、この【恋】が今よりもずーっと遠回りな【恋】になってしまったとしても、それでもお友達にすらなれはいような男がまさか【彼氏】になれる筈がないんだから…………… なぁーんて、自分に言い聞かせながら、こうなりゃ多少の自虐も俺は厭わなかった…………… 「ほらほら紅くなってもダメだよ、自分の方から無礼講だよって勢い良く吹っ掛けて来たんだから、ここは潔くなってもらわないと!」 そんでもって同時に強気のままで進んだ、だってただただ自虐的なだけなんて、せっかくの誕生日なのに自分が可哀想だったから、これはもはや格好を付けられなくなってしまった俺に対する、ある種の慰めで演出 だからこれを「男らしさ」と呼ぶにはきっと無理があるよなって、そんな事くらい俺だってもちろん解っていたけど、しかしそれでもどうせ恥ずかしいお話をしなくちゃいけなかったんなら、例えば下手にナヨナヨしてしまうんではなくて、堂々と在り続けたかったんだ あくまで攻められなかっただけ、攻めの気持ちを失くしてしまった訳ではなかった…………… 「えっ……………まあそうだね仕方がないもんね、だけど聞いても面白くないと思うよ?だって私の最後ってリアルに2歳とか3歳だったと思うし、でもほらそんなのって普通じゃん?」 「いーや!2歳か3歳なんて悪いけど嘘だね!だってもしも本当にそうなら本当に普通なんだから、最初に紅くなってキョドる必要ってなかったろ?そこんところ佳樹もどう思うよ?俺は中2くらいだと思っちゃってるんだけど」 「大河がそう言うんならそうなんじゃねぇの?理沙にはちょっと申し訳ないけど、この人前から変なところだけやたらと鋭いんで、それにやっぱり大河は主役だからね、今夜ばっかりは【彼女】でも庇えませんよ……………で?」 「「で?」って最低!大河君が一度そっちに振ってくれた時点で逃げ切りだと思ったのに!期待した私がバカだった……………それに大河君も大河君で鋭過ぎ!どうして中2くらいかなって思ったの?とりまそこは聞かせて!」 「なんつーかな……………それよか最近のお話なら逆に開き直るかなってさ、例えばお酒の失敗とか受験のストレスでとか言い訳の幅も広くなるしね、だからそれかそれよりも昔の事だったとして、でもそうすると今度は躊躇う理由がない筈なんだよ、俺のカミングアウトおかげで小学校高学年の敷居は下がっていたから、すると消去法で中1か中2か……………いやここはやっぱり中2だな、だってもし中1なら「ほぼ小学生だもん!」とか言い切っちゃえば、可愛い感じで逃げ切れたでしょ?」 「お前もさすがだなぁ、裏切られ過ぎて目が肥えたか?皮肉な洞察力だこった……………」 「ふんっ……………喧しい……………」 でもこれできっと良かったんだ、言うてタネ明かしまではするつもりじゃなかったけど、それでも結局のところ英里ちゃんも楽しそうにしてくれていたから、それなら内容こそどこまでも下品な事だったけど、悪くはないかなって どうにもしょーもない無礼講的時間の中でも、そうやって少しでも自信や勇気を抱けたのなら、いよいよ正解とか不正解って解らないけど、とにかく夢中でしかし同時に冷静に、気取れる時は頑張って気取ってみる、こうなりゃそんなスタンスは貫き通したんだ…………… 「参りました!私の負けだよ……………もう言い訳も出来ないよね、大正解の中2だよ!」 「理沙も相手が悪かったね!でも本当に凄いよ大河君!なんだかまるでコナン君みたいで、となりで聞いててビックリしちゃった!」 「コナン君ってばまた小学生!そう言う英里ちゃんも面白くてなかなかツボなんだけど!」 「アハハハッ!でも本当だね、えっ、でもやっぱり待って!そんな大河君の事だからもしかして私のもお見通しって事なの!?」 「えっ……………いや、それは……………」 しかしこうなってしまうと俺はたちまち困った訳だ、だっていちいち可愛いくて、そんでいちいち【好き】なんだもん そんなに飲んでいないのに紅くほだされちゃって、嫌がっているのか楽しんでいるのか、どちらにしたって見つめられると俺は弱い お見通しどころの騒ぎじゃなかった、頭の中は真っ白で次に返せる言葉すらなかった、でもそうやって黙っちゃったらまたまたきっと沈黙になっちゃう、それだけは避けなきゃなんだけど 「それは?」 「うーん……………まあこんなの勘だけど、でもなんとなく俺と同じで小5くらいとか?もちろんこれもなんとなくなんだけど、なんか恐いテレビとか苦手なのかなって勝手なイメージ!」 こうなりゃ自棄だし適当だった!なぁーんて本当は可愛いかもって半ば勝手な期待を込めて、ぶっちゃけすんごい最近にベッドしたいところではあったんだけど でもそれでまさか的中しちゃって、そんでもって笑って済めばそれで良いけど、でも万が一にも傷付けちゃったら終わりだし これが難しいところだった、まあだからって個人的には超絶楽しくて幸せで、だけどいよいよ長くなったらその分だけ「なんの話をしてんだろ?」って、思ったりもしなくもないけど だけどラインと一緒に居るのじゃやっぱし違うぜ!さすがに【恋】って素晴らしいなとここへ来て改めて! そんでもってこれでも最後には【彼氏】になりたかった俺としては、面白い人にも鋭い人にも強いてなりたかった訳ではないけど とにかく今は急げないんで、それでもせめて俺の楽しいが英里ちゃんにとっても楽しいでありますように、なんなら楽しいになりますように キョドるくらいなら適当を取る…………… 酒を飲み飲み笑顔も貫き通したんだ…………… 「ちょっ……………ねぇ!本当にねぇっ!どうしてそうやってズバリ当てられちゃうの!?そんでもって恥ずかしいくらい大正解だよ!ちなみに怪談とかオバケとか大大大嫌いなのっ!」 しかしこれは誕生日の奇跡かなにかか? 狙ってないのに当たっちゃうし、照れ臭いのか面白いのかいよいよボディータッチとかも、パシッ、パシッ!って、優しくもしっかりと、ニコニコしながらマジで楽しそうにさ…………… これはもう調子に乗らずにはいられなかった 「えっ、それってマジに言ってる!?そっかそっか、いやぶっちゃけ適当も適当で当てに行ってはなかったからさ、自分でもちょっとビックリだよね!」 ニタニタが止まらねぇ、話題が話題なだけにニタニタしていたらまあまあ失礼な気もしているのに、どうしてもニタニタが止まらねぇ! 「ビックリって、それはこっちのセリフだよ大河君!本当に本当に凄過ぎるっ!ねぇねぇどうしたらそんなに鋭くなれるの!?なんなら勘が冴えちゃうの!?」 「いやぁ……………言うて今のは完全にデタラメもデタラメだったからなぁ、強いて言うなら俺も涙の数だけ強くなれたのかもね、裏切られたりとか騙されたりするのが恐くて恐くて、そんでもってそうやってビビり散らかしている内に自然と身に付いちゃったのかな?自分でもよく解んないけど……………でもだとすっとそれはそれは哀しいお話だよな、つまりそんだけフラれてるって事になるからね、だけどそうだな、今年こそは俺も【彼女】が欲しいなぁって、なぁーんかついでに抱負も言っちゃいましたが、うん……………そんな感じ!」 つーか英里ちゃんが欲しいんだが…………… だけどもしも差し支えがなかったのなら、そりゃあ俺だっておねしょの話なんかより【恋】の話がしたかった訳で、つーか普通にそうだろって でも最後には呟くように、話題の転換を試みた だけど…………… 「あっ!つーか大河君のお酒がなくなってるよ?そんで次は何にする?私はハイボール!」 なんだかちょっぴり切なそうに、だけどクスッて感じで微笑んでくれたと思ったら、英里ちゃんの方から被せるように誤魔化すように、そんな話題なんかあっという間なかった事にされてしまったんだ もう【恋】なんてしないってか…………… 悔しくってしょうがない…………… 焦れったくってしょうがない…………… 「ん?そいじゃあ俺もハイボールにしよっ!」 だけど仕方がなかったんだ、だって俺がどんなにマジで【恋】をしたかったんだとしても、そんなのってぶっちゃけ英里ちゃんには関係のなかった事だったつーか、とにかくこうして何をしても相手がその気になれない内は、どうしようもなかったんだもの だったら今はやっぱり仕方がないから焦らずにね、なるだけ差し支えのないようにって、だからって決して諦めやしないけど、一度【恋】から離れようって それはそれはどうしようもなく不本意だった、でも英里ちゃんも不本意だってば、我慢をするのは男の俺の役目だろう? もうどうしようもなく【好き】なのに、もうどうしようもなく【好き】だからこそ…………… 「そんじゃあついでに一緒に何か食べ物も追加しようよ、俺は焼き鳥、砂肝とネギマをどっちも塩で!そいでみんなはどうする?」 いつかのチャンスの順番を信じて…………… 呆れたように呆れるほどに、俺は今【恋】をしていた、心は君の事だけを見ていた……………
/1303ページ

最初のコメントを投稿しよう!

30人が本棚に入れています
本棚に追加