9-352『DOKO』

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そしてひとまず佳樹んところの下にて、「バイクは明日酒が抜けてから、適当に取りに来るから」って、流れるようにとっても自然に、いよいよ俺は英里ちゃんと2人きりに…………… もちろん俺が道路の側を、そんでもってちょっぴり意識的に歩幅を合わせながら、まずはドキドキとワクワクが止まらない! しかしだからって今度こそ黙りは許されないのだ、いかんせん今度は俺の方から誘っていた次第、「どこに行く?」とか「どこが良い?」とか、聞かなきゃバイバイになっちゃうかも つーか「送るから」ってもう言ってしまっている以上、英里ちゃんはすっかりその気になっていて、するとこれから2軒目って実は既にあり得ない事になってしまっていたのかも知れないけれど、しない後悔よりやった後悔、もとい聞かぬ後悔なら聞いてからの後悔だから 「さて……………てか今さらだけど時間とかは大丈夫?大丈夫ならこれから中央の方で2軒目を探したいんだけど、英里ちゃんは希望ある?」 だからってここは頑張って固くならずに重たくならずに、そんなところを意識しながら、俺は頻りにそんで密かに本当はビビりな俺自身の事を鼓舞しつつ、いざサラッと尋ねた…………… 「そうだなぁ、ああ時間なら大丈夫だよ、私も明日は当然お休みだし!てか大河君こそ次はどこが良いとか希望ないの?お誕生日なんだから私の方が合わせるよ」 「そうね、そしたらどうしよっか、もちろん食べ物はもういらないし、だけどなんかちょっと疲れちゃったから、近場で雰囲気良さげな居酒屋を見付けて、そこに入っちゃおっか」 するとそれは本心か、それとも断れない性格だから?まあしかしどっちにしたって、とりま俺らはこのまま2人で飲み直せるそうな…………… そうと決まれば話は早い!まあでも言うて日付も変わる前から【亀松】は、さすがに俺的にもさながら解散フラグつーか、どうせバイバイした後で行く事になるんだろうし、だったら仮に一番近いのがそこでも【亀松】はなしの方向で でも女の子を連れてまったり飲み直したいんなら、英里ちゃんからのリクエストでもない限り、ドブ板もやっぱしなんか違うよねって 計画性もなかったけれど、まずは確実に差し支えのなさそうな、そんな提案をさせてもらった 「あっ、そうしようよ良いねそれ、理沙ったら飲む事自体が久しぶりだったからなのか、かなり酔っ払ってたし、だから私もぶっちゃけ気疲れしちゃってたの、だからお誕生日なのに申し訳ないけど、賑やかなところよりは落ち着いたところが良いかなぁって、本当は私もそんな風に思っていたところなの」 「おっ、それは気が合うじゃない、実は俺もかなり気苦労が多いタチでさ、だったらもしも英里ちゃんさえ嫌じゃなかったら、個室の居酒屋とか入らない?それなら中央に知ってるお店あるし!まあ言うてチェーン店なんだけど」 「私はそれでも全然構わないよ、つーかチェーン店の方がソフトドリンクとかも種類が豊富だから、お酒が弱い私的には実はその方が助かっちゃうかも」 「なるほどね、そんじゃあそうしよっか!」 しかし全ての気苦労は、ある種毎度のパターンで総じて取り越し苦労だったって事なのか、意識しちゃって身構えちゃってさ、そんな風に心は固くなってしまっていたのは、この期に及んで俺ばかりで? 断れない性格にしては、お酒が嫌いにしては、逆に恐いくらいに全面的にトントン拍子で、そして俺達は落ち着きのある明るさをキープし得たまま、のんびり歩き続けてまもなくお目当ての居酒屋さんへ 22:50 そいで今度は対面になって、改めて腰を降ろす しかしここまで来ていながら、俺の頭はいよいよ雪国みたいな本当の真っ白になってしまったのだ、見つめ合うと素直になんたら、我ながら【好き】ってば甚だ脅威過ぎる ドキドキしていたとかそんな次元じゃなくって、それこそ前回2人で焼き肉をした時とおんなじような感覚だったつーか、意図してアメリカ人に囲まれて居る時よりも言葉も話題もなくて、やっぱし最初は飲むに限ってしまったんだ 「ねぇねぇ、あのさ大河君?」 「ん?どかした?」 するとそんな俺と対になって接してしまうに、英里ちゃんも英里ちゃんでやっぱし気遣いの人だから、本当に本当に申し訳ないんだけど、こう言うのって辛かったのかな? 俺はビールの英里ちゃんはピーチウーロンで、男女で居酒屋に来た時のテンプレみたいなお酒で乾杯を済ませて以降、食べ物なんてもういらないのに「何を食べる?」しか口を聞けなかった俺に対して、ここは英里ちゃんの方から話し掛けてきてくれたんだ なんとも情けなくてどうしようもない、しかしこれはぶっちゃけ助かっちゃう次第…………… それを受けて俺はとりまもうこれ以上は自分でも恥ずかしくないように、なんならどこまでも鈍感そうでも平然と、カラッとした感じで呼び掛けに耳と心を傾けさせてもらった…………… 「煙草は別に我慢しないでも良いからね、職場も喫煙率高し、私はそう言うのに抵抗ない人だから、つーかずーっと我慢しているんでしょ?お誕生日なんだから気にしないで楽にしなよ」 「いやいやそこは気にしますって、だけど今夜はごめんね……………助かるよありがとう」 しかし英里ちゃんってば、一体何を言い出すのかと思ってドキドキしていれば、焦るくらいに天使過ぎる、だけどきっと俺の人間性を試すような事を、まるで当たり前の事みたいにそっと優しく言ってくれて それでも本当は我慢するべき事だった、ましてやここは居酒屋の個室、すると余計に吸ったらダメだったんだろうけど、バカな上に多分心がまあまあ弱っていた俺は、そんな優しさつーか配慮にある種甘えずにはいられなくって 次の瞬間にもお礼と謝罪を繰り返しながら、多分冷静になりたかった一心で、俺は約束のハイライトに火を着けてしまっていた…………… 「いやマジでごめんね、でもありがと、ぶっちゃけさっきからかなり我慢してたんだよね」 しかしそうやって煙草を吸う事が出来たからなのか、するといよいよニコチンとタールも改めて恐かったんだけど、ほどなく自ずと落ち着きのある感覚素直な自分に戻れて ニヤニヤつーより普通の笑顔で、俺は改めて朗らかでそんで落ち着きのある、まったりとしたお喋りを再開させる事が出来た…………… 「だと思った、大河君は解り易いもん」 「そっか……………でもだとすっと俺もまだまだガキだな、英里ちゃんの方がよっぽど大人だよ、いつも冷静って感じで、一緒に居ると癒されるってば俺のセリフだぜ」 「またまたそんな事を言って!私の方こそまだまだ子供だよ……………でもそうね、実は前から思ってたんだけど、大河君ってやっぱりお話が上手だよね、そんでもってカラオケも上手だし、するとかなりモテるんじゃない?」 「それがそうでもねぇのさ、特に最近だとフラれっぱなしの砕けっぱなし、泣かせるよりも泣かされる側って感じでさ……………マジ情けないっすよ、つーかそれを言ったら英里ちゃんの方こそモテるんじゃない?普通に可愛いし」 しかしそれを言うなら、どう考えたってきっと英里ちゃんの方が聞くのも話すのも上手でさ、つーか俺としてもそうして話し易く感じてしまっていたからこそ、それはそれは徐々にだけどやっぱし調子に乗らずにはいられなかったつーか、いつからか理性より感情で そこは結局【好き】だったんで、つーかいよいよサシなんだし、この際ここは思い切ったんだ 「ちょっ……………大河君!てかまあまずはありがとだけど、そう言うところを私は言ってるの!そんでもってちなみに私は全然モテませんから!モテるなんてそれは勘違いだよ!」 「そう言うところと言われましてもねぇ、こうなったらこの際隠すつもりもねぇから言っちゃうけど、それこそ【彼女】なんて高校の時を最後にずーっと居ないし、だからモテるどころかクソ非モテだよ……………きっと次から次へとって行けないのがダメなんだよね、これでもかなり切り替えが苦手な人でさ……………」 「へぇ!じゃあ【恋】すると一途なんだ!」 「一途なのかそれとも未練タラタラなのか、我ながら紙一重なところだけどな、でもそうだね、相手が居ればつーか仮に片想いでもそうだけど、たった1人の【好き】な人が居る時に、他所に気が移った事は一度もないよ……………」 ちなみにとっても照れ臭そうに、ニヤッてしながら一瞬視線を逸らしちゃう英里ちゃんも、いちいちツボで改めて【好き】で でもだからってデレデレしないで、我ながらまあまあ饒舌なまでに真面目に語らう事が出来たのは、やっぱし煙草の魔力だったのか、それとも傷だらけになる前の無垢な感覚が実は心に戻りつつあったからなのかな? なんだかいよいよ自分でも解んなかったけど、きっと俺は英里ちゃんの恋愛観に事前にサラッと触れていた事もあったからこそ、ある種下手に取り繕い過ぎてしまう事もなく、素直な心を継続的に開示し続けていられたんだ…………… 「一途と未練は紙一重か……………なんかそれ私にもちょっと解る気がするよ……………」 だからって不安はまだまだ着いて歩いた、だってさっきみんなと一緒に居た時は、この手のお話を英里ちゃんが拒んでいたのはやっぱ事実だし、それに時折ふと切なそうな顔とかされたし しかし俺としてもここまで心を見せてしまった後だったから、そんな英里ちゃんに対していちいち一喜一憂する事はなく、いや間違っても一喜一憂なんてしてしまう事のないように 頑張って強くて冷静な心を保持しては掲げ続けながら、つーかとにかくせっかくなんだし、もう正解でも不正解でもまずは素直で在り続けようって、その事だけは終始心掛け続けていた 「まっ、そうやってまあまあゴツい見た目とは裏腹に実は心の弱い俺は、ある時から忘れる事を諦める事にしたんだよね、すんごいネガティブなお話だろ?でもそうすっと心が軽くなって幾らかの余裕も生まれてくれたのかな、まあこれは多分なんだけど、以前よかきっと優しい人間になれたと思うんだよね、自分のをそうする事が出来たからなのか、人の痛みや弱さを受け入れられるようになってさ……………あっ、てかマジで急なんだけどなんか甘い物とか食べたくない!?疲れた時にはやっぱ糖分だよ!」 それでも俺には飾り散らかそうって気はなかった、そんでもって本当はまだまだ酷く迷ってたし不安だった しかしその前に、俺はきっと自分でも焦るレベルで強かな人間だったんだろう、まさかここで決めに行こうとは微塵も思ってなかったクセして、まあ偉そうにベラベラと するとみるみる熱心なりに言葉を失って行く英里ちゃんに、恐れにも似た感覚をどうしたって禁じ得なくて、なんならそれはさっきの英里ちゃんみたいにガラッと話題を変えてしまったり、改めて情けないかなつまり気取り通せずに でも嘘だけは絶対に言わなかった、これぞ誠心誠意ってヤツで、本当はもっと上手いこと言って気を惹きたかったところだけど、【好き】が真剣だったからこそ心にもない事って俺には言えなかったんだ つーか言いたくなかったんだ…………… 「良いね甘い物!私ったら実はどうしようもなく甘党なの!大河君それはナイスなアイデア過ぎるよ!そんじゃあ私はバニラのアイス!」 しかしそうやって再び得られた笑顔とは、つまりはようやく歩み始める事の出来た慕情が、ある種の振り出しに戻ってしまった事の証拠にも思えてしまったりして なぁーんて、これまた取り越し苦労で、それこそ全部勘違いなら俺は助かっちゃうんだけど、どうやら対する答えはまだまだお預けのまま、穏やかは穏やかだけど有意義とは思い難い、そんな時間をきっと確立させてしまった俺だった 「なんだかマジで気が合うのな、俺もこのメニューの中からならそれにしようと思ってた」 だけど…………… だけどこれだけは絶対に絶対に間違いのなかった事、敢えての遠回りな俺なりの優しさも策の内と思えたのなら、つーかそこはぶっちゃけ煙草を吸えていた事だし、いよいよいちいちヘコむようなだらしのない俺ではなかったんだ アイスくらいじゃ心は冷めないのさ…………… そんでもって英里ちゃんの心もそうであって欲しいなって、俺にとってはアイスなんかより甘い時間に、淡くも確かに願っていた……………
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