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「じゃぁ、俺も聞くけど凌はなんで俺にかまう?」
だって真紘は本当に分からなかった。凌がどうして自分にまとわりついてくるのか。
真紘といえば
どこにでもいる、その他大勢の高校生そのものだった。
例えば、168cmの身長。
多分これはまだ伸びる筈だと真紘自身は思っているのだけれど。
「せめて、あと5cmは伸びて欲しい」
「なんで?真紘は、これくらいが丁度いいよ」
ぼそっと真紘が呟いたのを聞きつけて、そんなことを言う凌はそろそろ180cmに届きそうな身長で。
何が丁度良いのか分からないまま、その時の悔しさだけを真紘は今も覚えていた。
そんな真紘に比べて凌といえば、どこにいても目立つのは、容姿のせいばかりじゃなくて。
頭が良くて、運動神経も良くて、性格も良い。って。
だけど、その完璧さがものすごく気持ち悪いと、真紘は思う。
「好きだから」
「嘘つき」
「嘘じゃないよ」
お手本みたいに完璧な笑顔は、真紘には歪んで見えた。
「ふーん。それは俺がみんなのようにお前をチヤホヤしないから、気になってるだけじゃねぇの?」
そう言うと真紘は凌をそこに残して歩き出す。
痛いくらいに突き刺す視線が後ろから追いかけてくる。
それでも真紘は振り返らなかった。
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