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翌日。
教室に入った真紘の目に飛び込んできたのは、自分が昨日ノートを借りた女子と親しげに話す凌の姿だった。
「……」
ったく。何が、別にどうもしないよ。だよ。
真紘はため息をつく。
「あっ、真紘くん。おはよう」
彼女よりも先に凌が自分に気が付いていることも、なのに、まるで今気付いたように振る舞っていることも真紘は知っていた。
「わざとらしいやつ」
ふたりの側を通らないと自分の席まで辿り着けない真紘は
「おはよ」
素っ気なくそう答えてふたりの横を通り過ぎる。
席に座ると、鞄を机の脇のフックにかけて、何事もなかったみたいにツンとして、前だけを見て頬杖をつく。
こんなこと、なんでもない。
本当に、本当に、なんでもない。
傷ついたら負けだ。
空耳みたいに真紘に聞こえてくるのは
「真紘は誰が好き?」
クスクスと笑いながら、何度も繰り返えされる意地悪な質問。
その質問に真紘が本当のことを答える日は
きっと来ない。
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