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「やっぱり、真紘は寄るところなんて、なかったんだね」
嬉しそうな声が癇に障る。
「すぐにバレちゃうような嘘つくなんて、オレ達と一緒に帰るのがそんなに嫌だったの?」
背の高い凌はわざわざ腰をかがめて、下から真紘の顔を覗き込んでそんなことを言う。
「別に、嫌でも何でもねぇよ。めんどくさいだけ」
「真紘くん、ひどいよぉ」
ほら、そういうのが、もう、無理。
マジ、ウザい。
めんどくさい。
こんな風に三人並んで、しかも真紘を真ん中にして、一緒に帰りたがるふたりの気が知れず、真紘はこの時間が苦痛で仕方なかった。
だから、隙あらば
「じゃあな」
と、逃げ出してやろうと思っているのに、少しでも真紘の歩調が早くなったり、遅くなったりすると、凌はすぐに気が付いて真紘の手を強く握った。
まるで
「逃がさないよ」
と、言われているみたいで。
真紘の心臓は痛くなる。
「そうだ、真紘くんも彼女作っちゃえば?そしたら、気兼ねなく一緒に帰れるよ」
真紘が何に気兼ねをしているというのか。
見当違いな彼女は、そんなぎょっとするようなことまで言い出した。
「ねっ、間宮くんも、良い考えだと思うでしょ?」
やめてくれ。
それなのに、凌は綺麗に口角を上げて
「そうだね」
と、答えた。
プツン。真紘の中で音がした。
「なんで俺がお前らと帰る為に誰かと付き合わないといけないんだよ!」
「真紘」
「俺は自分が好きなった相手以外と、絶対に、誰とも、付き合う気はないから!!」
そう言い放つと真紘は、凌の手を振り解き、ふたりを置き去りにして駆け出していった。
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