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「だって。良かったね」
真紘の後ろ姿を見送ると、くるりと制服のスカートを翻し、凌を振り返って彼女は言った。
「何が良かったね、だよ。
だいたい、どういうつもり?真紘にあんなこと言うなんて」
凌は不機嫌そうに顔を顰めた。
「あら、怒っちゃった?」
「君は真紘を手に入れる為にオレと手を組んだはずだろ?それなのに他の誰かと付き合えば良いなんて、今更、裏切る気?」
「まさか。裏切る気なんてないから安心して。だけど、おかげで真紘くんの本心が分かったじゃない。これでもう他の女の子に嫌々、色目使う必要もなくなったわね」
「真紘の本心?」
「真紘くんは、本当に好きな相手としか、付き合わない。つまり……」
「……つまり……?」
「ちょっと、マジで?この言葉の指す意味が分からない。って、ことないよね?」
「も、もちろん分かってる。これからも真紘が好きになりそうな相手は、先回りして全力でオレが潰せば良いってことだろ?」
「間宮くんって、本当に何も見えてないのね。まぁ、いいわ。とにかく私と間宮くんのどちらかが真紘くんを手に入れる日まで、協力し合いましょ」
そう言って彼女は右手を差し出した。
真紘を手に入れる為に、使い方次第で彼女は有効な駒になってくれるだろう。
けれど、さっきまで真紘の手を握っていた同じ手で、彼女の手に触れる気にはどうしてもなれない凌は、彼女が差し出した手から視線を逸らした。
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