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はじめてだった。男とするのは。後ろに入れる良さを知ったのも。
それを思い出して下半身がじくっとしはじめた。
「とろっとろ。かわいいの」
と濡れた唇を高坂の親指がぬぐう。
ぼんやりと高坂を眺め、そして一気に熱が冷めた。
「お前、居酒屋のトイレで何をする気だ!」
胸を強く押して体を引き離すと、高坂が頬を撫でて額にキスをする。
「なっ」
「そうだな。居酒屋はやばいか。よし、続きは俺の部屋でな」
「行く気などないから」
このまま強引に連れていかれて、しかも相手の好きなようにされるなんて嫌だ。
「それなら、花村の具合が悪いという理由をつけてお姫様抱っこをして外に連れ出すから」
「何!」
背丈は同じくらいでも筋肉量は全然違う。前に本意ではなく彼の体を見てしまったから知っている。すごくいい体をしていた。薄っぺらなこの体を抱き上げることを目の前の男は簡単にしてしまうだろう。そんな醜態をさらすなんてまっぴらごめんだ。
「行くからやめろ」
「初めからそう言えばいいんだ」
素直に従うほか道がなく、結局は相手の思うつぼではないか。
ご機嫌な顔をして背中に腕を回してきて、せめてそれは拒否してやろうと高坂の腕をつねった。
<了>
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