学校帰りの買い出し②

8/23
前へ
/33ページ
次へ
 「…くだらない」  それは至極当然な解答だった。  第一印象、隠キャ。  まるで絵に描いたようなガキで、色白のゲーム好きオタク。  今風に言えば、そういう言い方になるのだろうか。  少なくとも私は、「カズ」に対してろくな第一印象を持てなかった。  最初に出会った瞬間に、直感で思ったのだ。  コイツは「やばい」と。  そんな私の感情とは裏腹に、カズは私以上に驚いた表情のまま、奇妙な視線を向けてきた。  なんでカエルと一緒にいるの?と、彼は聞いてきたのだ。  すごく、神妙な面持ちで。  「……えっと……」  私はそれに答えなかった。  答えなかったというよりも、答えを濁したと言った方が正しい。  話すまでもないことだったし、話したところで、所詮は意味のない会話になってしまうと思ったからだ。  小学生になる頃には、世間で言う「常識」を、私はある程度弁えていた。  普通の子供は、カエルと会話はしない。  カエルを連れて歩くなんてこともしない。  年相応の可愛い服を着て、学校に行き、宿題をしたり運動をしたり。  学校では友達を作って、女の子らしい遊びをする。  ランドセルを背負い、登下校の道をみんなと歩いて、日が沈むまでにちゃんと家に帰ること。  カエルとサリエルに教えられたこの「ルール」は、私がこの世界で生きていけるように植え付けられた「知識」だった。  だから下手なことは話せないと思ったのだ。  『私は普通の女の子だ』  と、胸を張って言えるように。  
/33ページ

最初のコメントを投稿しよう!

18人が本棚に入れています
本棚に追加