学校帰りの買い出し②

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 「…あ、ウン」  その「声」は、声と呼ぶにはあまりにもか細く、力のないものだった。  一体どうしたら、そんなに小さな声が出るのだろう。  蚊が鳴くよりも小さな、死にかけの蝋燭の火のようなか弱い音が、鼓膜の表面をくすぐっていった。  耳かきの綿の部分で皮膚を撫でられたようなこそばゆさが、そこにはあった。  「人の声」で背筋が凍ったのはこの時が初めてだった。  思わず後ろを振り返った。  見ると、そこには怯えた目をしたカズの姿があった。  どうすることもできず、全身を(こわば)らせている情けない姿が。  カズはケンスケたちに従順だった。  だからカズが、彼らに逆らうことはできなかった。  逆らおうものなら、殴られるか蹴られるか、だったから。  だが、その事情を知らなかった私にとって、この時のカズの怯えた様子は、謎めいたものに違いはなかった。
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