33人が本棚に入れています
本棚に追加
“カランカラン“
店の扉を開けて、中を覗き込むように上半身から入店すると
「あら、ご新規さん。いらっしゃい」
と、カウンターの中からこの店の店主と思われる女性が手招きをしていた。
俺はカウンター席に座り辺りを見回した。
テーブル席に2組、カウンターの端から2番目に1人の客。意外と人いるじゃんと思っていると、
「こんばんは、はじめまして。このバーを経営してる薫子よ。走ってきたの?疲れてるみたいだし水飲んで」
と、俺の前に水と袋に入ったおしぼりが置かれた。
「あ、どうも。いや、ちょっと通りかかったんで……」
「ふーん、通りかかったんだ……」
んふふ、と意味深な笑いをした薫子さんは続けて
「はい、ドリンクのメニュー。決まったら言ってちょうだい」
と、メニューを俺に渡した後、端から2番目に座る別客のところに行ってしまった。
今日は飲もう。一瞬でもいいから、最近の出来事を忘れたい。
俺はメニューを見る。二度三度、表裏を繰り返し見る。なんだよこれ……
最初のコメントを投稿しよう!