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「自分は吉塚宙哉。宇宙に行く男でっす!」
「……。」
俺は、ストローをくわえたまま冷めた目で吉塚宙哉と名乗る男を見た。
またか……。宇宙に行くって……。
「吉塚さんは、宇宙飛行士なんですか?」
「ああ、正確には宇宙飛行士候補者かな。宇宙飛行士の選抜試験を受けて最終選考まで残り見事に合格!念願の宇宙飛行士候補者になったのだよ!試験っていっても、そんじょそこらの試験とは違う。書類選考から最終選考まで1年近くかかるんだ。その試験内容は……」
ああ、長くかかりそうだ。吉塚の本当か偽りか分からない話しで一晩終わるんじゃないのか。
「吉塚くんは、うちの常連さんよ。私と吉塚くんは10年以上の仲なのよね〜。フフフ」
と、薫子さんが吉塚が頼んだのであろうコーラを持ってカウンターから顔を出した。
「やだなぁ、ママ。照れるじゃないか」
「最初に来た時は、書類選考の話を一晩中してくれたわね。それからは、何度も1次試験の話を聞かされて……。でも、最終選考と合格の話しは今日が初めてね!」
吉塚は頭を掻きながら少し照れていた。
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