幸せそうに

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幸せそうに

ケータイの履歴をじっと見る いつまで待っても【小野瀬雄乃】から連絡は来ない 朝、迎えに来ることもなかった 「うぇい」 上から手を伸ばして大地は俺のスマホを取る 「なんだよ」 「…どうせ連絡なんてこないんだから消せよ」 トン、と消去ボタンを押して、小野瀬の連絡先を消す 「…うっせぇな」 「お前さ、何回告られて忘れられりゃ気が済むんだよ」 「……」 「お前が好きだ」と言った 桜の舞う入学式 「側に居られるなら幸せだ」と笑うと 幸せそうにお前も笑った 「お前が好きだ」と言った 汗の流れる帰り道 「側に居られるなら幸せだ」と笑うと 幸せそうにお前も笑った 「お前が好きだ」と言った 服一枚では寒い頃 「側に居られるなら幸せだ」と笑うと 幸せそうにお前も笑った 「お前が好きだ」と言った 吐いた息が白い頃 「側に居られるなら幸せだ」と笑うと 幸せそうにお前も笑った 「お前が好きだ」と言った 愛を数えるのもやめた頃 「側に居られるなら幸せだ」と笑うと 幸せそうにお前も笑った 明日もきっと、「お前が好きだ」と言うのだろう 俺は今日までの… 数え切れないほどに貰った愛をお前に思い出してほしくて 「側に居られるなら幸せだ」と笑うけど お前は何も知らぬ顔で笑うのだろう 昨日と変わらぬ、とても幸せそうな顔で
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