3

1/1

5人が本棚に入れています
本棚に追加
/16ページ

3

「――っ、冷たい」 ハッと意識が浮上した。 どうやら僕は寝ていたらしい。 「水にビックリするなんて、お前変わってるな」 暗闇で声が聞こえた。彼の声だ。 「いたの?」 「いるさ。ここはオイラの縄張りだぞ」 僕の体に、湿った砂粒がかかった。 軽快なザクザク音に合わせてハミングが聞こえる。 彼はご機嫌らしい。 僕はというと、強烈な眠気に襲われていた。 「おいおい、起きたばっかでまた寝るのか?」 「気持ちがよくて……」 「種の本能だな。寝ちまえよ。上で水を撒いてる人間がいなくなったら、オイラも寝てくる」 本能ってなに? 寝てくるって、どこで? 彼に聞きたいことがあるのに、僕の意識は急速に薄れていく。 ザクザク、ザクザク。 音が遠ざかるにつれ、僕は夢に引き寄せられる。 嫌だな。 僕はまだ、彼と話しをしていたいのに。
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加