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意識が戻ったとき、僕の周りは仄かな光に照らされていた。しかし、体は土に覆われている。地上へ出たわけではないらしい。 「起きたのか」 彼がいる。 僕はもう驚かない。ここは彼の縄張りだ。 「お前、グッスリ寝てたぞ。やっぱり花は気楽でいいな、まったくよお」 土の中が明るいのは近くに穴を掘ったからだと、彼が教えてくれた。 「君はどこにいるの? 姿を見たいんだけど」 ハラハラと、僕の体から土が払われた。 「ほらよ、満足か?」 彼は毛むくじゃらの体をグデンと横たえ、大きな手で土をペシペシ叩いている。 ピンク色の鼻しか知らなかった僕が、初めて彼の姿を捉えた感想は「(ふしぎ)」だった。
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